アンジェスなどが開発中のワクチン候補 (c)朝日新聞社
アンジェスなどが開発中のワクチン候補 (c)朝日新聞社
世界で開発が進められている主なワクチン (週刊朝日2020年11月6日号より)
世界で開発が進められている主なワクチン (週刊朝日2020年11月6日号より)

 欧州に押し寄せた新型コロナの第2波で、フランスでは10月22日、1日当たりの感染者数が初めて4万人を超えた。イタリアでも10月中旬以降、感染者が連日1万人を超えている。

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 日本でも冬の流行期が迫る。医療崩壊を防ぎ、経済活動を継続させるためにも、ワクチンの早期開発を望む声が高まっている。

 現在、日本政府は、英アストラゼネカと米ファイザーがワクチン開発に成功した場合、それぞれ1億2千万回分の供給を受けることで基本合意している。

 アストラゼネカが開発しているのは、ウイルスベクターワクチンと呼ばれるものだ。他の無毒なウイルスに新型コロナの遺伝情報を忍び込ませ、ベクター(運び屋)にして体内に運ばせる。だが、初期試験でワクチン接種に伴う発熱、筋肉痛、全身の倦怠(けんたい)感など副反応が起こる頻度が高いと指摘されてきた。このため、最終段階の数万人規模で行う第3相試験では、抗炎症解熱剤を使用しているという。

 医療ガバナンス研究所理事長の上(かみ)昌広医師が説明する。

「6時間おきに解熱剤のアセトアミノフェンを1グラム服用することになっており、1日の投与量は4グラムにもなります。通常の処方では1回に0.5グラムなのでちょっと異常な量です。解熱剤を4グラムも使わなければ炎症を抑えられないとすれば、高齢者に接種するのは厳しい」

 薬を必要以上に飲むと、腹痛や、肝臓への障害が起きかねない。

 9月初旬には、英国での治験で被験者の1人に有害事象が起き、中断を余儀なくされた。脊髄(せきずい)に炎症が生じる横断性脊髄炎と見られるが、英国の規制当局はワクチン接種との関係を結論付ける確証はないとして、治験は再開されている。

 ファイザーが手掛けるワクチンも世界で最も先行している一つで、核酸ワクチンという。たんぱく質をつくる役割がある「メッセンジャー(m)RNA」を投与して免疫をつくる技術だ。だが上医師によれば、この最先端のワクチンにも難点があるという。

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