菅首相の肝いり政策である携帯電話料金の引き下げと関わりが深いのが総務省。ここをめぐる人事からも、安倍政権との“決別”が読み取れると同省関係者は言う。

「携帯電話料金を筆頭に、ふるさと納税や地方交付税制度など、菅さん肝いりの政策は総務省の管轄。だが、安倍さんは菅さんに総務省を好き勝手に仕切らせないように、高市早苗さんなど菅さんから遠い人を大臣にしていた」

 それが今回、二階派の武田良太氏が国家公安委員長から横滑りした。総裁選前から二階派と菅氏は蜜月関係にあり、菅氏と武田氏は二人三脚で総務省の政策に関与していく可能性が高い。

 もう一つの目玉であるデジタル分野の担当相には、平井卓也元科学技術担当相をあてた。

 菅氏はデジタル庁を新設する構想を持っていて、これを後押ししているのが竹中平蔵元金融担当相だ。竹中氏は、小泉政権の総務相時代に菅氏の能力を高く評価し、現在でも関係が深い。

 ただ、平井氏は過去の行動に批判もある。

 2013年6月にはネットの党首討論番組に出演していた社民党の福島瑞穂党首(当時)に対し、「黙れ、ばばあ!」と書き込みをしていたことが発覚。今年5月には、衆院内閣委員会の審議中に自身のタブレット端末でワニ動画を鑑賞していたことが問題になった。18年には、談合事件で国から指名停止処分を受けていた企業から政治献金を受けていたことが発覚し、返金したこともある。目玉分野の閣僚にスキャンダルが爆発するようならば洒落にならないが……。

 ところで、今回の人事でもう一つ注目すべきは「選ばれなかった人」だ。その一人が、安倍首相が元々は「後継者」と目していた岸田文雄前政調会長。ポストを何も与えず、権力から遠ざけた。ある自民党議員は言う。

「菅首相は以前から岸田氏と合わない。今後も要職を与えることはないだろう。今回の総裁選も圧勝なのに、陣営の議員に発破をかけて石破茂氏だけでなく岸田氏の票もひっくり返そうとしていた。1年後の総裁選に向けて、今からその仕込みをやっているように見える」

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10月の早期解散・総選挙が難しい理由とは