歌舞伎町の立ち入り先に向かう警視庁の捜査員ら=2020年7月24日夜(C)朝日新聞社
歌舞伎町の立ち入り先に向かう警視庁の捜査員ら=2020年7月24日夜(C)朝日新聞社

 7月24日の夜。東京・新宿歌舞伎町に屈強な眼付きの鋭い男たちが現れ列をなして悠然と歩いていく。そして男たちは2人1組となりホストクラブやキャバクラが入居するビルに次々と入っていった。

「警視庁です。風俗営業法に基づく立ち入り調査を今から行う」

 警察バッジを開いて見せながらこう店主に告げたのは通称「風俗警察」の捜査員だった。警視庁生活安全部保安課はこの日、新型コロナウイルス感染拡大防止策の一環として、いわゆる「夜の街」への一斉立ち入り調査を行った。この立ち入り、そもそも政府が新型コロナウイルスの感染が広がる「夜の街」で業種別ガイドラインを順守していない店舗を中心に、現行法の「運用」による対策に乗り出したことがきっかけだ。

「保健所による立ち入り調査ではどうしても限界があった。夜の街の監視に慣れている警察の生活安全部門に白羽の矢が立った」(警察庁幹部)

 警視庁保安課=風俗警察の捜査員は風営法を武器に「夜の街」の犯罪に対峙している。風営法における対象では性風俗店やゲームセンターなど業種は多岐に渡りホストクラブやキャバクラなど客を接待して飲食させる店は「接待飲食等営業」に区分されるのだ。

 警察庁の統計によれば2019年は全国に約6万3000の営業所が存在したという。こうした店の営業には所在地の公安委員会の許可が必要で原則として午前0時以降は営業できない。

 風俗警察が無許可営業などと判断し立件に至った場合、最も重い違反だと2年以下の懲役か200万円以下の罰金、または両方が科せられる。これ以外に営業許可取り消しや営業停止命令など行政処分もある。風俗警察の仕事が拡大している現状に、ある捜査関係者はこう話す。

「東京五輪に向けた徹底した風紀対策計画が組まれていたんだ。五輪は延期となりコロナ拡大防止という新たな命題が取って代わった。そして最も大きかったのは官邸の声だ」

 それを裏付けるかのように7月20日の会見で「あらゆる機会を通じて感染防止を図りたい」と菅官房長官が言及している。

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ポスト安倍でコロナ対策の主導権争い