コロナ第二波到来でも欲望を優先させるのか…作家下重暁子が指摘する人間の「報い」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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コロナ第二波到来でも欲望を優先させるのか…作家下重暁子が指摘する人間の「報い」

連載「ときめきは前ぶれもなく」

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下重暁子週刊朝日
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『人間の品性』ほか多数

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『人間の品性』ほか多数

※写真はイメージです(c)Getty Images

※写真はイメージです(c)Getty Images

 人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は、夏椿の花の写真を見て考えたことについて。

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*  *  *
 祇園精舎の鐘の声
 諸行無常の響きあり
 沙羅双樹の花の色
 盛者必衰の理をあらはす

 有名な平家物語の一節である。

 近頃さかんにこの一節を思い出す。半年前には思いもかけなかった新型コロナウイルスが世界中を席捲し、自分が感染しているかどうかわからぬままに、都会を彷徨している人類のことを考えるとふと口をついて出る。

 人間の欲望のままに、経済効率や便利さのみを追い求め、地球上の他の生物や自然(ウイルスを含む)を省みなかった報いが今訪れようとしている。第二波、第三波の到来さえ予想されている。

 だが、人間が欲を減らし、自分たちだけのための経済活動を低下させた途端に、自然は息を吹き返した。ヴェネチアの澱んだ運河が澄んで魚影が見えるようになったというし、軽井沢の山荘に来る鳥たちも今年は数を増している気がする。

 昨日入った知人のメールには、見馴れぬ花が写っていた。つややかな緑の葉の間に見える白い花弁、中央の花芯に濃い黄色が茂る。

 どこかで見たような……。記憶を辿って、そうだ、京都の寺だったと思い当たった。それも小さな寺で、その花はすでにほとんど白いまま地上に散っていた。

「日本では珍しい沙羅双樹です」

 案内した人が言った。

「インドの高地に自生し、釈迦が亡くなった時に咲いた、仏教の三大聖木といわれる樹です」

「五月~七月頃に花をつけますが、ほんとうの沙羅双樹は日本では育ちにくいので、夏椿をかわりに植えることが多いのです」

 たしかに写真を見比べると似ている。けれど、ほんとうの沙羅双樹はもっと高木で花も小さいとか。

 その寺の樹も夏椿だったかもしれない。なぜ代用されたかというと、一日しか花を咲かせないところが人生の儚さを感じさせるからとか、丸味のある葉が似ているからとかいわれるが、私は前者だと思う。


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