私「なんで今俺がお前に礼を言うんだよ! チータだよ!」


弟子「動物の?」
私「バカかっ!! なんでチーターが看護師やってるんだよっ! 昭和の『サトームセン』のCMじゃあるまいし。気持ち悪いんだよな、あれ。服着たツガイのチーターがクネクネ踊って『ステキなサムシング♪』ってヤツな。『あなたの近所の秋葉原~、サトームセンっ♪』」
弟子「なんのことだか??? サトームセン?」
私「……お前、何年生まれ? ひょっとして令和?」
弟子「平成10年です。令和ならまだ乳幼児ですよ」
私「わかってるよ!! おじさんがわからないことを言ってるときに、なぜ『この人何言ってんだろ?』って思いを顔に出す!? なぜ一時うなずいて『ちょっと調べてみます! 師匠っ!』って嘘でも前のめりな姿勢を見せない!? ほらその顔だよ! なぜそんな石のような目をするっ!?」
弟子「……調べてみ」
私「もう遅いよっっっ!! おい! 『ヘイSiri』とか言うな! そいつの声を聞くと胸がザワザワすんだよっ! だから『チーター』じゃない、『チータ』! なぜ?……俺だって知らないよっ! そいつに聞いてみろっ!」

 皆さんも『新型』にはくれぐれもご注意を。罹患された方のご快復を心よりお祈り申し上げます。

週刊朝日  2020年3月6日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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