わたしはよめはんを呼び、倒した手牌を前にして記念写真を撮ってもらった。

 幻の役満ともされる緑一色は我が五十有余年の麻雀歴にして初めてのアガリだった(過去二回、聴牌はしたことがある)。これで天和(テンホー)[一回]、地和(チーホー)[二回]、清老頭(チンロートー)[一回]、八連荘(パーレンチャン)[一回]、九蓮宝燈(キューレンポウトウ)[純正ではないが二回]、四喜和(スーシーホー)[約十回]、字一色(ツーイーソー)[約二十回]、大三元(ダイサンゲン)、四暗刻(スーアンコウ)、国士無双(コクシムソウ)[各百回以上]の主たる役満をすべて達成したのである(正直、あとが怖い。寿命が尽きそうだ)。

 ──と、麻雀の話はここまでにして、大晦日と一日は原稿を書いた。編集者が休んでいるときに仕事をするのはすこぶる気分がいい。自分は働き者だと勘違いできるから。

 そうして、一日は年賀状も書いた。こちらの住所と文面が印刷のもの、先方の住所が自宅ではなく会社のものには返信しないと決めている。

 一月四日はテニスの打ち初めで、近所のおじさんたちが十人も集まった。寒いなか、三時間ほどゲームをして解散。毎日、よめはんと雑煮を食っている。

週刊朝日  2020年1月24日号

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黒川博行

黒川博行

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

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