売り上げを減らそう 1日100食限定の飲食店が示す“労働の本質” 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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売り上げを減らそう 1日100食限定の飲食店が示す“労働の本質”

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週刊朝日

 ライター・永江朗氏の「ベストセラー解読」。今回は『売上を、減らそう。 たどりついたのは業績至上主義からの解放』(中村朱美著、ライツ社、1500円※税抜き、4万6000部)を取り上げた。

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 セブン-イレブンで明るみに出た一連の問題は、ぼくたちに、労働とはなにか、経営とはなにかを考える機会を与えてくれた。24時間営業の強要も、本部社員による無断発注も、根底にあるのは過酷な業績至上主義ではないか。

 ……てなことを考えながら書店を覗いていて、目にとまったのが、中村朱美『売上を、減らそう。』である。セブン-イレブンのトップが見たら、激怒しそうなタイトルだ。

 著者は京都で話題の飲食店、佰食屋(ひゃくしょくや)のオーナー。なんとこの店、店名の通り、1日100食しか売らないのである。午前11時開店、午後2時半閉店のランチ営業のみ。メニューもステーキ丼など3種だけ。連日完売。労働時間は短く、もちろん残業もない。オーナーも従業員もハッピーだ。

 本書は、佰食屋のノウハウや、危機をどのように乗り越えたかなどを、エッセイふうに綴ったもの。

 100食売れたら、次は110食売りたい、と思うのが商売人だろう。だが著者は限定100食に徹する。商売人なら誰もが目指す「拡大」を否定する。

「拡大」を否定したことで、いろいろなものが見えてくる。廃棄される食材や余計な設備など、「拡大」の裏にはたくさんのムダがあるのだ。なかでも最大のものは「時間」。「拡大」に取り憑かれた経営者は、従業員の「時間」をムダにしているという自覚がない。佰食屋の方法は、まさにコロンブスの卵だ。

 もちろん昔から「売り切れ御免」を掲げる蕎麦屋や和菓子屋はあるし、予約・定員制の飲食店も多い。「拡大」の否定を可視化したところが佰食屋の素晴らしさだ。未来の経営哲学がここにある。

週刊朝日  2019年12月20日号


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