室井佑月「住処は望郷として」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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室井佑月「住処は望郷として」

連載「しがみつく女」

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室井佑月週刊朝日#室井佑月
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中

イラスト/小田原ドラゴン

イラスト/小田原ドラゴン

 作家の室井佑月氏は、日本の行く末を案じる。

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 犬は人に付き、猫は家に付く。昔からそういわれている。犬は飼い主に従い、猫はすみ着いた場所に執着する、ということらしい。

 たとえば、飼い主の引っ越し。犬は喜んでついていくが、猫は嫌がる。もともと犬は群れで狩りをして生きてきた性質であり、猫は自分のテリトリー内で単独で狩りをする性質だから。

 さて、あたしがなぜこんな話をしたかというと、これから先、あたしたちはどうなるのだろうと不安を感じているからだ。

 世界的な投資家のジム・ロジャーズが、超少子高齢化の日本についてかなり悲観的な予告をした。この国の若い子は、もう海外にいくしかないといった内容の。

 でも、そういうことじゃない。仕事やプライベートで地方にいけば、繁華街はシャッター街となっている。人やものがたくさん集まる東京だって、ひと昔前の歓楽街は立て直しもできず、昼に見ると薄汚れている。

 テレビでは天皇の即位の式典や、来年の五輪について華々しく報じているが、四角い額縁の中だけの明るさだ。わざとらしくて、よけい自分とつながっている風景を暗く感じる。

 ここ10年で、この国の景色はかなりトーンダウンした。人はものを脳で見ているわけだから、歳を重ね、あたしが変わったということならいい。人として優しく穏やかになり、極彩色に見えていた景色がパステルカラーに変わったなら。が、そういうことじゃない。

 ほんとに世の中は暗くなった。格差は広がり、この国の6人に1人の子どもが貧困。ユニセフに心配されるまでになった。きっと、あたしの息子に見えている景色もおなじだろう。

 11月19日、日米貿易協定の承認案が衆院本会議で自民、公明、維新などの賛成多数で可決された。この協定はTPP(環太平洋経済連携協定)よりよほど日本に厳しいFTA(自由貿易協定)そのものだ。政府はFTAという言葉を頑(かたく)なに嫌ったが、その理由は、米FTAでちょっと調べるとどんなことかわかってしまうからだろう。協定の全容をいえない理由はそれだ。


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