「平成の30年間に、日本の国際競争力は1位から30位に落ちた」。それは「ユニコーン」、つまり評価額が10億ドル以上の未上場企業、要するに新たな事業を起こす企業が世界には380社あり、米国には200社弱、中国には100社弱あるのに、日本には3社しかないためだ、という。

「製造業のウェートはGDPで2割、雇用は17%しかない。そして、この割合はどんどん下がる。だから新しい産業を生み出す以外にないのだが、日本の企業が求める人材は、協調性があって言うことを聞く人間で、これでは新しいアイデアは出てこないし、新しい産業は生まれない」

 私はかつて、ソニーの盛田昭夫氏やホンダの本田宗一郎氏に何度も会って話を聞いた。彼らはいずれも、「日本にないモノをどうやってつくるのか。すでにあるモノをつくっていたのでは、より安く売るしかない。これでは企業はやっていけない。何とかして、日本にないモノをつくらねばならないのだ」と強調していた。

 そして、本田氏は「失敗賞」なる賞をつくった。失敗したことを表彰するのである。だが、残念ながら現在の多くの企業では失敗が許されず、守りの経営で、これではイノベーションが起きるはずがない。出口氏は「人とは違う、多様な変態を育てて新たな産業で稼げ」と主張している。

週刊朝日  2019年10月4日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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