鳴門の先発・西野(右)は、一回にいきなり4失点。苦しい立ち上がりを強いられた(撮影/写真部・松永卓也)
鳴門の先発・西野(右)は、一回にいきなり4失点。苦しい立ち上がりを強いられた(撮影/写真部・松永卓也)
鳴門の2番手・竹内。今夏初登板とは思えない堂々とした投球だった(撮影/遠崎智宏)
鳴門の2番手・竹内。今夏初登板とは思えない堂々とした投球だった(撮影/遠崎智宏)

 第101回全国高校野球選手権大会第9日は14日、2回戦3試合があり、第1試合の強打対決は、鳴門(徳島)が仙台育英(宮城)に5―8で敗れた。だが、打たれたエースの後を受け、九回に今夏初登板を果たした背番号10の3年生投手には、確かな手応えが残る試合となった。

 一回、プレーボールのサイレンが鳴り響くなか、徳島大会から一人で投げ抜いてきたエース・西野知輝(3年)が直球を投じた。だが、仙台育英の1番打者に左翼線へ流し打たれ、いきなり二塁打を浴びた。2番にバント安打を許し、3番は三ゴロ併殺に仕留めたものの先制を許した。

 2死走者なしとなるが、1回戦の飯山(長野)戦で24安打20得点の仙台育英打線は止まらない。西野は4番にソロ本塁打を浴び、5、6番に単打で出塁されると、7番に左越え2点適時二塁打を許した。この回4失点。第1ストライクを狙われ、6番まではストライクの黄色いランプがつかなかった。

「初球から(相手が)振ってくるのは頭にあったけど、球が浮いてしまった。調子は悪くなかった。球をしっかりコントロールしきれなかった」(西野)

「良いときはコースに来るんですけど、初回は抜け球が多くて、それを一発で仕留められて、大量失点につながった」(捕手・原田力輝)

 二回からは低めを意識して修正を図った。しかし、四回にも2点を失った。五回に味方打線の5長短打などで1点差となったが、六回は自身の暴投も絡んで失点。七回も6番に適時打を浴び、3点差をつけられた。

 七回、背番号10の竹内勇輝(3年)は、登板に備えて肩をつくっていた。徳島大会も9日の1回戦、花巻東(岩手)戦も、登板はなかった。いつもは一回と五回に肩をつくるが、この日はピンチの七回にも登板を予期してブルペンへ。ベンチに戻ると、森脇稔監督から「九回いくぞ」と声がかかった。待望の今夏初登板に、「よしっ! ついに来たな」と気が引き締まった。

 九回、甲子園のマウンドへ。西野からは「楽しんで投げてこい」と言われた。リードされていても、野手もベンチも笑顔が多かった。

 先頭打者は、ここまで3打数2安打の5番。最初に投じたのは直球。球速は140キロだった。次は141キロ。7球目で遊ゴロに打ち取った。その後、四球を一つ出したが、無失点で切り抜けて笑顔でベンチに戻った。投じた24球中7球が140~141キロ。そのまま敗れたとはいえ、投手として自信を深める1イニングとなった。

「140キロ出せたらいいなあ、と思っていた。調子良かったので……。周りの野手も声かけてくれたんで、楽しんで投げられました」(竹内)

 常に競い合ってきた西野と投げた最後の試合。竹内は言う。

「(徳島大会で)投げたいと思っていたが、西野が投げてここまで連れてきてくれたので、そこには感謝したいです」

 2人とも大学で野球を続ける予定。試合後、西野と言葉を交わした。

「今までありがとう。大学でもお互いがんばろう」(本誌・緒方麦)

※週刊朝日オンライン限定記事)