延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
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村上春樹の『ノルウェイの森』
村上春樹の『ノルウェイの森』

 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回はあるときの「村上RADIO」について。

【写真】村上春樹の『ノルウェイの森』

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 夏至も近くなった日曜の夜、村上春樹さんがDJを務める「村上RADIO」の第6回がオンエアされた。ラジオから7時の時報がポーンと鳴って、「The Beatle Night」が始まった。

「今回は範囲をぐっと絞って、『ラバー・ソウル』以前のものに限りました。でも素敵な曲ばかりですよ」(2019年6/16放送)

 春樹さんがビートルズの青春を語り、世界でコピーされたカバー曲をかける。いったいどんな曲が選ばれるんだろう……。

「初期のビートルズの音楽には、大きく息を吸い込んで吐いたら、それがそのまま素敵な音楽になっていたみたいなナチュラルな感覚があります」と語る春樹さん。初めて聴いたビートルズは「プリーズ・プリーズ・ミー」。「FENで聴いて『これはすごい』と一発で思いました。何がどうすごかったか? それは今でもまだよくわからない。ただ『この音楽の響きはこれまでにはなかったものだ』ということだけはきっぱりと確信できました」

 僕は放送後も繰り返し「村上RADIO」を聴く。

「ギリシャのスペッツェスっていう島に住んで、そこで何にもせず、ただぼーっとしていました。日本から持ってきた何本かのテープの中に、たまたまビートルズの『ホワイト・アルバム』があって、海岸でのんびり釣りなんかしながら、毎日そのカセットテープを聴いていました。近所のたちがまわりにいっぱい集まってきて、僕がたまに釣り上げると、みんなでわっととびかかってくるんです。で、まあ、しょうがないから魚がかかるたびに猫たちにあげていました。そんな毎日を送りながら『ホワイト・アルバム』を浜辺で聴いていると、音楽がね、不思議なくらい心に染みてくるんです。これ、いいなあ、と実感しました。そしてビートルズの音楽にインスパイアされてというか、その年の冬に長編小説を書き始めました。それが『ノルウェイの森』です」

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