


日本を代表するお酒と言えばやはり日本酒。「おじさんが飲んでいる酒」というイメージがつきまとい、国内での消費量は落ち込んでいる。なんとか復活させようと愛好家や業界団体が知恵を絞るなか、注目されているのが飲む器。日本酒の成長をはばむ3つの壁を乗り越えるには、ワイングラスとの「国際結婚」が一番だというのだ。
「日本酒は好きです。普段からチーズの盛り合わせと一緒に飲んだりもします。合うんですよ、日本酒とチーズ」
20代の女性は右手にワイングラス、左手にチーズやサンドイッチなどのおつまみを持ちながらこう話した。場所は東京・虎ノ門ヒルズ。5月15日にあった、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」の会場だ。
最高金賞や金賞に選ばれた67の蔵元が全国から集合。大勢の飲食業者や日本酒ファンでにぎわい、商談会なども開かれた。
ワイングラスと日本酒。ちょっと似合わなさそうな組み合わせだが、日本酒の魅力を再発見できるベストパートナーだという。アワードの実行委員会の中心メンバーで酒文化研究所(東京都千代田区)代表の狩野卓也さんはこう話す。
「ワイングラスは、日本酒特有の香りや見た目の美しさを強く感じさせてくれるのです」
アワードの会場では、日本酒用に設計されたワイングラスが配られた。膨らんだ形状で、従来のおちょこや升では感じにくい繊細な香りをつかめる。透明なグラスに注ぐことで、微妙な色合いや粘性もわかりやすくなるという。
「純米酒人気」などと言われているが、日本酒全体の消費量は右肩下がり。国税庁によると、清酒の課税数量は1973年の177万キロリットルをピークに、ほぼ一貫して減少。2017年度にはピークの3分の1以下の53万キロリットルまで落ちている。
酎ハイやワイン、本格焼酎などが人気となるなか、日本酒は伸び悩む。慣れ親しんだ世代が高齢化し、安価な酒を大量に買っていた人が減っていることも影響している。