失言で辞任した桜田義孝前五輪相 (c)朝日新聞社
失言で辞任した桜田義孝前五輪相 (c)朝日新聞社
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「失言や誤解を防ぐには」と題した自民党のマニュアル
「失言や誤解を防ぐには」と題した自民党のマニュアル

「発言は切り取られることを意識する」
「報道内容を決めるのは目の前の記者ではない」

【画像】国会議員に配られた自民党のマニュアルがこちら

 党内の強い危機感が垣間見える文言が並ぶ。

 自民党は今月「失言や誤解を防ぐには」と題したマニュアルを作り、国会議員に配った。

 桜田義孝前五輪相や塚田一郎元国土交通副大臣が失言で相次ぎ辞任した苦い記憶が新しいうちに、議員が発言する際の注意点をまとめたものだ。

 自民党組織運動本部遊説局が作成。内容については、危機管理広報に詳しいノンフィクションライターが監修している。

 マニュアルでは、新聞・テレビ各社の報道について、限られた紙面や放送時間で取材内容をまとめるのが常と指摘。「発言は切り取られることを意識する」よう指南しているのをはじめ、「句点を意識して、短い文章を重ねる話法」によって余計な表現が減って、誤解されにくくなるとの対策も示している。

 支持者など身内と話す際に使う「危ない表現」では「周囲の喝采や同調に引きずられると、つい『公で言うべきことではない』ことを口走る可能性がある。会合や酒席で盛り上がるような言葉遣いを第三者にチェックしてもらうこと」と注意喚起している。

「タイトルに使われやすい強めのワードに注意」では、歴史認識やLGBTに関する個人的見解や、事故や災害への配慮に欠ける発言などについてこう呼びかける。

「表現が強くなる傾向にある。自らコントロールすることが大切だ」

 実際にメールでこのマニュアルを受け取った、ある自民党議員は呆れ顔だ。

「今さらこんなことを触れ回らなければいけないのは何とも情けない」。

 そもそも、この時期にマニュアルが配布されたのは「相次ぐ党所属閣僚の辞任に危機感を抱いた官邸発の参院選対策」とピンときたという。

 企業の危機管理広報会社「エイレックス」の江良俊郎(えらとしろう)社長は、マニュアルの存在自体は評価できるという。

「マニュアルを活かした実践トレーニングを繰り返すことで失言を減らせるだろう」

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マニュアル効果で失言撲滅なるか