- ニュース
- 記事
だが、敗戦によって主権は国民が持つことになり、天皇は象徴ということになった。
そして1960年代までは天皇という存在を持続すべきかどうかという論議が、マスコミでも行われていたのである。
となると元号は必要なくなるのではないか。天皇という存在と民主主義とは矛盾する要素が少なくない。
たとえば、天皇、皇太子には基本的人権というものがない。早い話が、天皇や皇太子は嫌だと言っても辞められないのである。住宅を移すこともできないし、皇居の外では自由な行動もできない。
明治以来、主権は天皇にあったが、新しい憲法では主権は国民に移った。昭和天皇は吉田首相に「天皇は主権を持つ国民とどのように付き合えばよいのか」と問い、「世襲である天皇のあり方は憲法と矛盾するのではないか」とも問われたそうだ。吉田首相は答えることができなかった。
天皇と民主主義がどのように協調できるのか。昭和天皇も現天皇も、そのために懸命に努力をされてきたのだと思う。もちろん私たち国民のほとんども、天皇の努力を大変だなと感じながら受け入れているのだが。
※週刊朝日 2019年4月19日号

田原総一朗
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数
このコラムニストの記事をすべて見るあわせて読みたい
別の視点で考える
特集をすべて見る
この人と一緒に考える
コラムをすべて見る
カテゴリから探す
-
ニュース
-
教育
-
エンタメ
-
スポーツ
-
ヘルス
-
ビジネス