あなたにも、あなたの親にも、いずれ訪れるかもしれない介護。具体的な計画はケアマネジャーに作ってもらうが、お金に関する話は聞きにくい面もある。給付金などの制度や介護保険外の便利なサービスなど、基本的なことを頭に入れておくと、介護の手続きにも役立つはずだ。
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「私は一人息子で、ほかに頼る人もいなくて……。介護の交通費が月40万円ほどかかったこともあります」
自らの体験をそう振り返るのは、介護情報サイト「親ケア.com」を運営する横井孝治さん。生活総合情報サイト「All About」(オールアバウト)の介護ガイドも務めている。
両親の同時介護が始まったのが、2001年夏。統合失調症になった母(当時65歳)の代わりに家事をするため、週2回仕事で東京と大阪を往復する途中に三重県の実家に立ち寄った。掃除、洗濯、食事の用意などを続けたという。
介護の始まるきっかけは、大きく分けて二つ。長期入院後、自宅で介護保険の居宅サービスを使うケース。もう一つは、認知症のような症状が出始めて日常生活に支障をきたすときだ。一人暮らしの親の家がゴミ屋敷になった、物忘れが増えて様子がおかしい、などの異変で気づくことになる。
横井さんの介護は後者のケースだった。
「介護保険制度が前年から始まったことは知っていましたが、自分のやっている家事が介護とは気づきませんでした。介護保険のサービスを使うため、地域包括支援センターで要介護認定の手続きをする発想もなく、半年ほど色々な失敗を繰り返しました。私のように介護の情報を得られず苦しむ人は、今も多いと思います」(横井さん)
その後、母が入院し、ひとり残された父(10年2月死去、享年83)は家事ができず、ゴミ屋敷に。横井さんが高額療養費の手続きなどで町役場を訪れたとき、親切に声をかけてくれたのが近くの居宅介護支援事業所のケアマネジャーだった。
居宅サービス利用の手続きを進めたところ、要介護1と認定された。その後は通所介護(デイサービス)に週3回通い、週2~3回の訪問介護(ホームヘルプサービス)で、掃除や洗濯、食事の用意をしてもらうようになった。
突然介護に直面しても慌てぬように、サービス利用の流れを知っておきたい。要介護認定の判定が出るまでは1カ月ほど。自治体は結果が出るまで待つように指導しているという。