そんなときは「お金がどんどんなくなっていくから私は心配よ」「私はこれからの生活を不安に思っているの」というように「私」を主語にして、家族の思いと自分たちを取り囲む現状を伝え、これ以上の状況の悪化を食い止めていくことが肝心なのだ。

 アルコール依存症もかつては男性が圧倒的に多かった。しかしここ最近は女性のアルコール依存も増えているという。

「1970年代は男性30:女性1くらいの割合でした。しかしいまは男性6:女性1くらいの割合になってきています。男女の差がなくなりコンバージェンス(収束)に向かっているような状況です」(樋口医師)

 そして大石医師によると、女性ホルモンがアルコールの代謝を阻害するため、女性のほうが男性よりもアルコール依存症になりやすいという。「お酒を飲むのが習慣化してアルコール依存症になるまで男性が20年くらいかかるところ、女性の場合は4~5年でなると考えておいたほうがいいでしょう」(大石医師)

 また社会の高齢化に伴い、65歳以上のアルコール依存症患者も増えている。

「加齢と共に人間の肝臓の機能は落ち、アルコールを分解する速度は遅くなっていきます。そうすると、たとえ大量に飲酒しなくても“酔った状態”が続くことになる。高齢者の場合、少ない飲酒量でもアルコール依存症になる危険性があることを覚えておいていただきたいです」(樋口医師)

 そして近年何かと話題になることが多いのが、買い物依存症だ。買い物依存症は厳密に言えば、特定の行動に依存してしまう「行動嗜癖(しへき)」である。大石医師のクリニックでは買い物依存症外来も設けている。

「クリニックに来る患者の3~4割がADHDやASDなどの発達障害を合併しています。また他の依存症を合併していることも多いです。あるときはアルコール依存症の顔が、またあるときは買い物依存症の顔が、はたまた別のときはクレプトマニア(窃盗症)の顔が出てきたり……というようにさまざまな症状が出てくるうちの一環として、買い物依存症の顔を持っている人もいます」(大石医師)

 買い物依存症だけに苦しんでいる人は、むしろ少ないようだ。そして買い物依存症のリスクは、男性も女性も同じだという。気になる人は、下記の依存症チェックをやってみよう。
 買い物依存症の一番の特徴は、使用目的のないものをたくさん買ってしまうことだ。「買ったものを実際に使わなくても、ただ手に入るだけで満足なのです。だからネットなどでどんどんものを買っても、届いた段ボールは開封しない。家の中に未開封の段ボールが急速に増え始めたときは、要注意です」(原宿カウンセリングセンターの所長で臨床心理士の信田さよ子さん)

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