週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」から
週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」から

 がんは2人に1人かかるといわれ、早期発見のためにも検診を受けることが重要です。週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」では、Q&A形式で「がんが心配で困った」に関する悩み・疑問に専門家が回答しています。ここでは、「検診を受けていれば安心?」「良性なら心配しなくていい?」など5問について、グランドハイメディック倶楽部理事の森山紀之医師、埼玉県立がんセンター腫瘍診断・予防科長兼部長の赤木究医師に回答してもらった内容を紹介します。

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Q 検診を受けていれば安心?

A 検診で百パーセント見つかるわけではありません

 がん検診には有効性が高いものとそうでないものがあります。現在、がんによる死亡率を低下させることが、科学的な方法によって認められていて、簡便で公共政策として費用がさほどかからない検診は「胃のX線検査と内視鏡検査」「子宮頸部の細胞診」「乳房のマンモグラフィー(乳房X線検査)」「肺の胸部X線と喀痰細胞診の併用」「大腸の便潜血検査」です。これらは自治体から補助金が出ているため、無料、または少額で受けられます。

 それ以外の検診は有効性が確立されていなかったり、費用がかかりすぎたりといった問題点があります。

 ただし、有効性が実証されているがん検診でも、がんの場所や性質などによって見つけられないこともあります。たとえば乳腺の密度が高いとマンモグラフィー(乳房X線検査)では、がんを発見しづらくなります。また、がんはある程度の大きさになるまでは、検査で見つけることはできません。

 このような場合は、検査法を変えたり、定期的に検診を受けたりすることが大切なのです。

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Q がんになりやすい家系はあるの?

A がんになりやすい変異した遺伝子を受け継ぐことも

 がんの発生要因のうち、遺伝が関わるのは全体の5%程度で多くはありません。ほとんどのがんは遺伝子の変異が積み重なることで発生しますが、遺伝性のがんは生まれた時点ですでに変異した遺伝子を一つ親から受け継いでいるので、がんを発症する確率が高くなります。特徴は若年発症のほか、がんが多発する、同じがんを発症している血縁者が多いことなどです。

 遺伝性のがんには、大腸がんや子宮体がんなどの発症リスクが高い「リンチ症候群」、乳がんや卵巣がんなどを引き起こす「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」などがあります。これらの原因となる遺伝子を持っているかどうかは、遺伝子検査で調べられます。

 がんの発症に影響する遺伝子の変異が見つかった場合、例えば大腸がんのリスクが高ければ便潜血検査だけではなく内視鏡検査も受けるなど、より精密な検査方法で検診を受ける、定期検診の間隔を短くするといった対処方法により、がんの早期発見につながります。

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「がんの疑いがある」と言われ…