で、綾野剛が吼える。その吼えどころが謎なんです。寝具メーカー「太陽ベッド」の買収に成功した綾野剛。創業者の理念を忘れ、私腹を肥やす社長(かたせ梨乃・ほぼ「極道の妻たち」仕様)に詰め寄る。

「親が用意したゆりかごすら捨ててしまった……。社宅の寝室のベッドは……」。ここでベッドの写真をバサーッとばらまいて、絶叫。

「フランス製だぁーッ!!」

 お、おう。そうですか、フランス製ですか。何か話の本筋と、ちょっと違うところを絶叫された感。

 または「自分の力で這い上がってこい!」というセリフ。ま、普通「こい」あたりで吼えますよね。

 しかし綾野剛の吼えどころは、ひと味違う。「こい」の次の「では」だから。去りゆく挨拶に、全身全霊の気迫を込めて「で! は!(絶叫)」。なんでそこなの。

 もう3周回って面白くなってまいりました。吼えたと思えば、「ハーゲーターカ冥利につきますよ」って。今度は伸ばしちゃった。ストレートかと思えば変化球。

 ドラマ「半沢直樹」(TBS系)は、「倍返しだ!」って決めゼリフがあったけど、綾野剛に決めゼリフ無し。予想もつかぬ吼えどころに、毎回気もそぞろだ。

週刊朝日  2018年9月7日号

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カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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