田中圭は、吉田鋼太郎さんと林遣都君の強烈な攻め芝居を、受けて受けて受けまくり、ちょっと見方を変えたらありえないドラマを現実に引き戻す。これはとてつもなく難しいことだと思う。

 彼のお芝居を見ていると、故・三沢光晴選手のプロレスを思い出す。受けて受けて最後に攻めて観客を沸かす。香川照之さんは本来なら受け芝居の人なのかもしれないが、強烈なキャラクター造形とテクニックにより、受けながらも激しく攻め込んでいき、作品の中で強烈なインパクトを残す。今回の「おっさんずラブ」は周りの攻めがあまりにも激しすぎるので、田中圭の受け芝居のすごさが一般の人にも伝わったと思っている。

 そして、少々香る、男としての色気。あの色気は僕は、人としてのクズ感から出ていると思っている。男があこがれるクズ感というか。それが田中圭の根幹にはあって、それがあの人の人としてのパワー、人間力になっていると思う。すごく人間っぽいんですよ。

 今回の作品をきっかけに、役者・田中圭の前の大きな扉がたくさん開くことを願うし、きっとそうなるに違いない。

週刊朝日 2018年6月22日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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