9日夜、走行中の東海道新幹線の車両内で刃物を持った若い男に切りつけられ、男性ら3人が死傷した事件で、同じ車両に乗っていた東京都在住の稲本義彦さん(55)が、週刊朝日の取材に当時の様子を証言した。
【新幹線3人死傷事件】車内通路は血の海に…騒然とした数々の現場写真はこちら
「キャー、キャーというただ事ではない悲鳴が聞こえた。後ろを振り返ったら男性2人がもみあっていて、刃物で切りつけていた。あたりは血の海になっていた」
稲本さんが乗っていたのは、12号車の真ん中あたり。午後9時45分ごろに突然、「キャー、キャー」という女性の悲鳴が聞こえ、ただならぬ様子を感じたという。
車両の後方を振り返ると、男性2人がもみあっていて、1人が刃物で切りつけていた。
車内はたまたま女性客が多かった。甲高い悲鳴が響き、パニック状態に。乗客は一斉にデッキへと駆け込んだ。狭い出入り口に一気に殺到したので、転んでいる人もいたという。
稲本さんもデッキへと逃げ込んで、110番通報した。
「切りつけていた男は眼鏡を掛けていておとなしい感じの風貌でした。通路に倒れこんだ男性に対し、馬乗りになって延々と刃物を振り下ろしていました。倒れた男性はぐったりとしていましたが、それでもめった切りにしていました。血の海がべったりと通路に広がっていました」
乗客の通報で駆けつけた乗務員は、トランクを盾代わりにして男に近づき、取り押さえようとしていたという。
車両は小田原駅で臨時停車し、男は神奈川県警に身柄を確保された。12号車の乗客はみなホームに降ろされたという。
10日午前0時現在、稲本さんはまだ小田原駅のホームにおり、「同じ車両に乗り合わせた女性の中には、今も震えが止まらなかったり、泣いたりしている人がいます」と話した。(本誌・中川透)
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