ユーミンは1954年生まれ。多摩美術大在学中の72年、荒井由実として「返事はいらない」でデビューした
ユーミンは1954年生まれ。多摩美術大在学中の72年、荒井由実として「返事はいらない」でデビューした
松任谷由実のベスト・アルバム『ユーミンからの、恋のうた。』
松任谷由実のベスト・アルバム『ユーミンからの、恋のうた。』

 デビュー45周年を迎えたユーミンこと松任谷由実が3枚組のベスト・アルバム『ユーミンからの、恋のうた。』を発表した。40周年記念として発表し、100万枚を売った『日本の恋と、ユーミンと。』に続くベスト盤2部作の完結編にあたる。

【『ユーミンからの、恋のうた。』のジャケットはこちら】

『日本の恋と、ユーミンと。』では、「ひこうき雲」「やさしさに包まれたなら」などの荒井由実時代の曲をはじめ、アルバム『Road Show』(2011)までのヒット曲、代表曲を収録していた。「カンナ8号線」「DESTINY」「WANDERERS」といったライヴでの鉄板的定番曲も入り、ライヴに通い詰めたファンには親しみ深い選曲だった。

 今回の『ユーミンからの、恋のうた。』は前作と違い、ユーミン自身が選曲。本人が記した「備忘録」(CDに封入)に“人は希望がないと、生きる力が衰えていきます。みるみるうちに。だから、こんなアルバムを届けようと思いました。45年の間につくった、600余りの歌のなかから、いま、皆さんに聴いてほしい45曲を選びました。この歌たちは、人の営みの美しさと切なさ、この世の尊さと儚さの“讃美歌”だと思っています”とある。

 全45曲は、“ディスク1 Pure Eyes~純粋さを、捨てない。”“ディスク2 Urban Cowgirl~“私”で、生きてゆく。”“ディスク3 Mystic Journey~旅を、やめない。”――という三つのテーマごとに収録され、すべての曲にユーミンのコメントが記されている。

 大半の曲は、ユーミンのヒット曲、代表曲しか知らない人にとって興味をそそられるに違いない。

「瞳を閉じて」は、長崎の五島列島の分校の女子高生から“校歌を作ってほしい”と依頼されて書いた曲だ。その経緯はテレビ番組にもなり、広く知られている。「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」も、お笑い番組「オレたちひょうきん族」のテーマ曲だったので、ファンならずともよく耳にした曲だ。荒井由実時代の「雨の街を」や「雨のステイション」はオールド・ファンには馴染み深い。「ジャコビニ彗星の日」も人気の高い曲だ。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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