佐藤優氏 (c)朝日新聞社
佐藤優氏 (c)朝日新聞社
森友学園問題の一連の流れ
森友学園問題の一連の流れ

 元外務省分析官の佐藤優氏が「森友疑惑」の今後について持論を展開する。

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 財務省は約80ページもの報告書を発表したが、上層部の誰までが改ざんの意思決定に関わったのか、という肝心な部分は隠している。霞が関では、決裁書のコピーを取って局長や官房長、次官など上に見せる追加配布(追配)という情報共有の方法がある。

 この追配を追っていけば、どこまで組織ぐるみだったか、一目瞭然だが、今回の文書には追配に関する情報はない。昭恵夫人や政治家の名前は派手に出し、肝心な部分から目をそらそうとしたのではないかとさえ思える。

 森友疑惑は最終的には安倍政権の責任だが、霞が関に生じた変化に目を向けることも大事。官僚は基本、身分保障がされているので、政治家とどんなに対立しても首にはならない。政治介入があっても何らかの方法で跳ね返すというのが、かつての霞が関の文化だった。

 しかし、今回は文書まで改ざんし、おもねった。1枚目が決裁欄で、2枚目からが内容という形式は、書き換えないという前提で成り立っていたので、今後はそのときの政治情勢で決裁文書を各省庁が変えてくる恐れが出てきた。

 これからは全部、調べろということになり、霞が関の信頼の根本を揺るがした大問題。大阪地検特捜部がかつて証拠のフロッピーを改ざんした事件があったが、それに匹敵すると思う。今回の事件では、大阪地検が資料を出すのに積極的だったと報じられている。大阪地検が財務省のこうした行為も表に出すべきだと判断した可能性があり、今では財務省vs.検察というフェーズになっている。

 要するに最強官庁同士の戦いで、これは旧大蔵官僚が立件されたノーパンしゃぶしゃぶ事件以来の構図だ。政府と財務省はトカゲのしっぽ切りで佐川氏を辞めさせたが、これは大変な判断ミス。検察の論理からすれば、やましいこと(違法性の認識)があるから辞めたとなり、佐川氏を挙げてやろうとなる。私も取り調べを受けた経験があるが、検察は佐川氏に「昭恵さんの件を削除したことを今になってどう思う」と聞くと思う。

 さらに「心の奥底では悪いと思っていたの?」と畳み掛け、佐川氏が「はい」と言ってしまえば、調書を巻かれてしまう。彼はそこへ進み出した。検察は何もできなければ、政権の手先と謗られるので、今回はレゾンデートル(存在価値)を賭けざるを得ない。

 その過程で安倍政権は自壊していくのではないかと思う。

(本誌・森下香枝)

週刊朝日  2018年3月30日号