難民収容施設をつくることを明らかにしたのは、何よりも北朝鮮に対する強烈なメッセージである。これまでは、難民を恐れて北朝鮮のレジームを壊すのを回避してきたのだが、難民がなだれ込んでも平気だぞ、と宣言したことになる。

 さらに、トランプ大統領が訪中して習主席と会談した後、昨年11月に習主席は側近の宋濤・中央対外連絡部長を北朝鮮に派遣した。

 だが金正恩委員長は宋濤氏に会わなかった。会うことを拒んだわけだ。この出来事を、日本を含む世界のメディアは、習主席が金委員長を甘く見たための失敗だと見た。

 宋濤氏は格が低すぎて、ばかにされたと怒った金委員長は会見を拒んだ。そのために、習主席はメンツをつぶされた、というわけだ。

 だが、私が信頼している習主席をよく知る人物は、金委員長が習主席の特使とは会見しないことを予見していたので、メンツをつぶされないために、わざと格下の人物を特使として派遣したのだろうと語った。

 逆に言えば、習主席は、金委員長と対話する気持ちがないことを示した、ということではないのか。習主席が北朝鮮の核保有を認めず、北朝鮮をかばう気持ちが薄れたとなると、米中が手を組める可能性が生じてくる。私は、これは日本の出番で、かつて小泉純一郎首相が金正日総書記に対して行ったように、日本が米朝の対話の仲介役となるべきではないか、と考えている。

週刊朝日  2018年2月2日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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