「事件当日に何があったのかまだハッキリしない中では、自主的な引退というかたちが適切なのかもわからない。協会が日馬富士の引退届を受理したのは早すぎたと思います。協会独自の調査には限界があり、鳥取県警の捜査結果を待ってから決めるべきだった」
日馬富士の引退を避けたかった白鵬としても、不本意な結末であったろう。その怒りの矛先は、貴乃花親方に向いているという。
「日馬富士が引退を決意したと聞き、白鵬は電話して『やめなくていい』と止めたが、日馬富士は『決めたんだ』と言うばかりだったそうだ。モンゴル勢同士の内輪の話で収められると思っていたのに、貴乃花親方がコトをここまで大きくしてしまったせいでこうなった、と考えているようです」(前出の親方)
東京・両国国技館で11月30日、開かれた相撲協会の定例理事会では、貴乃花親方は八角理事長と正対する席に陣取り、暴行問題への対応をめぐって3時間半近くにも及ぶ激しい攻防を繰り広げた末、次の「巡業」は外された格好だ。白鵬も貴乃花親方に対する言動などで厳重注意を受け、ケンカ両成敗となった。
貴乃花親方にとって正念場となりそうなのが、来年1月の初場所の後に待ち受ける相撲協会の理事選だ。
2010年に、所属する二所ノ関一門を離脱して自身のグループ(14年から貴乃花一門)を立ち上げて以来、貴乃花親方は一門外の親方からの票も取り込み、4回連続で理事に当選してきた。16年にはついに協会トップである理事長選に立候補し、敗れている。だが、“逆風”が吹く今回は協会主流派側による切り崩し工作も予想される。貴乃花一門の関係者が語る。
「貴乃花親方は前回の理事長選後、巡業部長に就いた。巡業部は、地方回りで弟子の面倒が見られない期間が長い不人気ポスト。今は巡業部に貴乃花に近い親方が出入りし、実質的な貴乃花グループになっている。今後は審判部、広報部など比較的人気のポストに誰をつけるかなどをめぐり、人事・権力闘争となるでしょう」
黙して語らぬままの貴乃花親方は、どんな決着を考えているのだろうか。(本誌・小泉耕平)
※週刊朝日 2017年12月15日号より抜粋、加筆