銀行も自治体も百貨店も合併・統合が進むなかで、増え続けてきたのが大学。しかし、18歳人口が再び減り始める「2018年問題」に直面し、大学の再編策や経営破綻時の処理策を、政府も本格的に検討し始めている。大学経営にこれから何が起きるのか。
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を巡って揺れる新潟県柏崎市。人口約8万5千人の同市は今、深い悩みをもう一つ抱える。地元に二つある大学の再生だ。ともに定員割れが続いている。
工学部を持つ新潟工科大は、今年度の入学者が154人で、募集定員200人の77%。大学の在籍者総数も、収容定員の62%(550人)にとどまる。経済学部がある新潟産業大は、在籍者が定員の78%(465人)。今年度入学者は募集定員140人の72%の101人だった。
「今は3桁の見通しを持てていますが、2桁が続くと……」と産業大の事務局長は言葉を濁す。募集定員を15年度から20人減らしたが、定員割れは止まらない。戦後まもなく開学した専門学校が起源で、付属高校もある伝統校。ただ、近年は存続が危ぶまれてきた。
一方の工科大は、新潟県内の産業界が地元での技術者育成を求めて、95年に開学した。設置費130億円は、県・柏崎市などの自治体と民間が拠出。県内複数の市が誘致を競ったが、原発マネーで潤う柏崎市が用地提供や巨額の資金拠出で地元開学にこぎつけた。
苦境の両大学だが、先に大きな決断に踏み切ったのは産業大。14年に柏崎市に公立化を要望した。公立化すれば、市の財政から運営費が出て、学費を安くできる。柏崎市は今年度中に可否を判断する予定だ。
同様な動きは近年、全国で広がる。効果は大きく、長野大(長野県上田市)は13年まで8年連続で入学者が定員割れだったが、公立化方針を示した14年から定員を満たした。大学取材を30年余り続け、『大学大倒産時代』などの著書がある教育ジャーナリスト、木村誠氏はこう話す。
「公立化は志願者を増やせる一方で、他大学との公平性や私学の独立性の点で問題もあります。産業大と同じ柏崎市にある工科大の学長は、公立化を疑問視する文章を日本私立大学協会の機関誌で発表していました。公立化の際は、地域の実情に合った長期的展望と戦略が欠かせません」