1992年から離婚カウンセラーとして延べ3万7千人の相談を受けている「離婚110番」の澁川良幸氏は、熟年離婚の特徴を次のように述べる。

「離婚したい人の8~9割が女性です。一方、7~8割の男性は離婚を回避したい。女性は離婚したい気持ちを長い間抱え込む傾向にあります。子供が巣立ってから、自分を自由にしてあげたい気持ちが強くなり、子供に背中を押してもらって離婚に踏み切るケースが多いですね」

 離婚したい女性は、夫の言葉の暴力や思いやりのなさ、浮気、親の悪口といった理由を挙げるという。

「浮気を妻が許してくれたと思い込んでも、妻は完全に許していません。また親の悪口を上から目線で口にする夫を、妻は一生許しません。思いやりの言葉をかけてもらえなかったことも、妻はちゃんと覚えているんです」(澁川氏)

 19年前に65歳で離婚したマンション管理人で戦争体験を伝える太田弥三郎さん(仮名・84歳)は、「妻とほとんど会話がなかった」と振り返る。25歳で3歳年下の妻と見合い結婚したのは、肝臓がんで余命半年と宣告された母親を安心させたかったからだ。「妻は私の母親を看取ってくれた。大変だったと思います」。だが妻にねぎらいの言葉を口にしなかった。

 母親を亡くしてすぐに神奈川県で小さな製紙会社の経営に乗り出す。長女と長男が生まれると、夫は働き、妻は家事と子育てと役割分担が決まった。だが、55歳の時に会社が倒産。会話が乏しく、趣味も異なる。別れは必然だったのか。飲食店で働いて自活した妻は、10年間の別居の後に、離婚届を送ってきた。

「長女とは疎遠になりましたが、58歳になる長男とは交流があります。孫は可愛いです」

【熟年離婚・危険度チェック(夫編)】
□ 妻が60歳前から資格を取得したり、働き始めたりした
□ 長い間「ありがとう」を言っていない
□ そもそも会話がほとんどない
□ 子供が自立している
□ 子育ての悩み事を聞いてあげたことがなかった
□ 浮気がばれたことがある
□ 言葉の暴力を浴びせたことがある
□ 出産後、妻に優しい言葉をかけてあげなかった
□ 妻の実家の悪口を言ったことがある
□ 自身の親族が原因で妻が困っていても無視していた

(作家・夏目かをる)

週刊朝日 2017年9月1日号より抜粋