──何が、高橋さんを変えたんでしょうか?

 人との出会いも大きいのですが、それ以上に芝居による経験が大きい気がします。お芝居って、別の誰かを生きようとするわけですから、そのフィードバックがもらえるんです。「ああ、こうしたらダメだよね」「でも、そうなっちゃうよね」……。そういう体験を、少しずつ自分の中に取り込んでいくんです。すごく豊かですよ、自分の人生自体が。

──政次という役も、高橋さんの中に取り込まれた?

 そうです。取材で「政次はどういう人間だと思いますか?」って聞かれても、うまく答えられないんです。役と自分が切り離せていないから。そんな役と出合えることは本当に幸運なことで、幸せな時間を過ごさせてもらいました。

──長いキャリアのなかで、役者という仕事がイヤになったことは?

 ないです。

──仕事が楽しくて仕方がない?

 というより、お芝居って呼吸みたいなものなんです。僕にとっては、“する”か“しない”かという選択ですらない。反射です。実際、お芝居させていただいているときの感覚って、呼吸と同じなんです。やらないと気持ちが悪くなる。「休みたいですか?」って事務所の人に聞かれるんですけれど、「いえ、息とめたくないんです」って答えてます(笑)。

週刊朝日 2017年8月11日号