芥川賞候補・今村夏子「劣等感を抱えていた子供時代」語る (2/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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芥川賞候補・今村夏子「劣等感を抱えていた子供時代」語る

週刊朝日
今村夏子(いまむら・なつこ)/(撮影/写真部・小原雄輝)

今村夏子(いまむら・なつこ)/(撮影/写真部・小原雄輝)

星の子

今村夏子著

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 真っ先に思い浮かんだのが英国の作家、ヒュー・ウォルポールの短編「銀の仮面」(1933年発表)。こちらは孤独な中年女性が貧乏そうな美青年を家に招き入れる話で、筋立ては全く違う。でも、肝心なところをあえて書かず、読み手を不安にさせたまま、おはなしが終わるあたりの感じが似ている気がした。「あひる」は現代日本を舞台にしながらも、普遍的寓話(ぐうわ)に思えた。

 芥川賞候補になると、おきまりのように事前に記者会見が開かれる。「こちらあみ子」と「あひる」、ふたつの作品の主人公は性格こそ違っているけれど、どこか社会になじめない点は共通している。「今村さん本人も似たような感じなのだろうか。学校に居場所のなかった少女が読書に耽溺(たんでき)し、そして自らも筆をとることになったってところかな」。新聞記者にありがちな決めつけをして、会見にのぞんだ。

 ある面で予想はあたり、そしてかなりの部分ははずれた。会場に現れた今村さんは、明らかに人見知りのようで、はにかむように受け答えする。内容について質問しても、しばし黙考した末に、「ちょっと……わからないですね」といった具合。はぐらかしているわけでも、すかしているわけでもなく、当意即妙な受け答えは苦手なようだった。読書家ではなかった。文章修業をしたわけでもなかった。候補になった感想は「びっくりした。こんなの読む人がいるんだ」。どこかひとごとのようだった。

 今村さんは1980年、広島市生まれ。大学入学とともに、大阪で暮らし始めた。卒業後は契約社員やアルバイトとして、新幹線やホテルの清掃業務をしていた。「パソコンをうまく使えないし、接客が苦手だったから」だそうだ。小説を書き始めたのは29歳。「作家ってなんとなくかっこいいと思って」書いた「あたらしい娘」(後に「こちらあみ子」に改題)が太宰賞を受けた。その前は漫画家になりたかったというが、絵を描くのが苦手らしい。4年前に結婚し、今年2月には娘が生まれた。


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