勝利宣言の演説後、ブリジット夫人と手をつないで支持者にあいさつするマクロン氏 (c)朝日新聞社
勝利宣言の演説後、ブリジット夫人と手をつないで支持者にあいさつするマクロン氏 (c)朝日新聞社

「ほんとに良かった?」「ウィかノンだけ言って!」

 25歳年上の妻を上目遣いで見つめ、支持者らとの集会の感想を迫るエマニュエル・マクロン氏。ブリジット夫人は化粧をしながら、目も合わせずに返す。

「二人だけの時しか言わないって知っているでしょ」

 5月7日。元エリート官僚で39歳のマクロン氏が仏大統領選に勝利した。ナポレオン3世以来、最年少の元首が決まった翌日、大統領選の舞台裏を追ったドキュメンタリーが放送された。在仏のエッセイスト長谷川たかこさんは、番組はマクロン陣営のイメージ戦略も織り込まれるから鵜呑(うの)みにはできない、と牽制(けんせい)しつつも、感想をこう話す。

「マクロンは討論会後に疲れてソファに倒れ込み『チョコレートをちょうだい』とねだる。だがブリジットは『そんな体に悪いものダメよ』とピシャリ。まだ二人は高校教師と生徒の延長にあるようにも感じさせて、『可愛い!』と思ってしまいましたね」

 ことわざに「年上の女房は金のわらじを履いてでも探せ」とあるとおり、日本でも姉さん女房の夫婦は、意外に多い。

 2016年度の厚生労働省の人口動態統計によれば4組に1組の割合だ。例えば野球界ではイチロー(43)と福島弓子(51)、松坂大輔(36)と柴田倫世(42)。芸能界を見ると小雪(40)と松山ケンイチ(32)、政界でも野田聖子衆院議員(56)は2度の結婚がともに年下夫で、マクロン夫妻とほぼ同じ年齢差と言えば、三原じゅん子参院議員(52)が24歳差の秘書と3度目の結婚に踏み切った。

 再婚時の相手が24歳年下だった夫婦問題研究家の岡野あつこさんは言う。

「いまの女性は外身も中身も若いですから、夫が5歳程度年下の夫婦は、私の周りにもたくさんいます」

 姉さん女房で男性が得るメリットは大きい、と岡野さんは話す。

「社会経験の豊富な妻が多いため、過酷な出世競争にもまれる夫は、人心掌握術やライバルへの対処など仕事で有益なアドバイスを得ることができる。出世するほど男は孤独になり、相談する先は限られます。(バツイチの)小泉純一郎元首相は姉を相談相手としたように、信頼できる身内は男にとって最強の武器です」

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