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従えば国内雇用減少 トランプ“口撃”の落としどころは?

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トヨタ自動車の豊田章男社長。今年1月に米デトロイトで開かれた北米国際自動車ショーで登壇した (c)朝日新聞社

トヨタ自動車の豊田章男社長。今年1月に米デトロイトで開かれた北米国際自動車ショーで登壇した (c)朝日新聞社

 安倍晋三首相は日米首脳会談後の会見で、「自動車産業」の名前を挙げ、米国での雇用創出などの貢献を強調した。巧みな“口撃”で日本企業を揺さぶるトランプ米大統領に、どう向き合うか。日米経済摩擦再燃の火種がくすぶっている。20年以上自動車産業を取材してきたジャーナリスト・井上久男氏がその落としどころを探る。

 日米間の貿易・投資関係の強化などが打ち出された共同声明。両国はこれまで、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉のように、多国間での合意形成をめざしてきた。しかし、今後は二国間交渉が重要となる。交渉上手のトランプ大統領を、日本側は押し切れるのか。

 経済産業省OBは「多国間交渉に慣れて、二国間交渉のノウハウがあまり残っていない。OBを含めて1995年の日米自動車協議の経験者に、急いでヒアリングしている」という。

「日米間で新たな経済摩擦が起こる可能性が、十分にある。トランプ氏の矛先は今後も、日本の自動車メーカー、特にトヨタ自動車に対して向くのではないか。しかし、日米自動車協議のときと違って、今回は『切り札』がない」

 こう語るのは、米国勤務経験が長い、日本企業トップ。「切り札」とは米国での現地生産の加速だ。

 95年の日米自動車協議の際、当時の橋本龍太郎通産相とカンター米通商代表部(USTR)代表の交渉は決裂寸前だった。決裂を回避できたのは、自動車各社が発表した「自主計画」の効果が大きかった。最大手のトヨタは、政治決着翌日の6月29日未明、「新国際ビジネスプラン」を発表した。現地化の推進と輸入拡大の二つが柱。政府間交渉と並行し、トヨタが水面下で米政府側と交渉していたとされる。

 これによって、トヨタは米国で新工場建設を決め、現地での生産能力を4年間で一気に倍増させる方針を表明した。GM(ゼネラル・モーターズ)車を輸入してトヨタのマークを付けて国内で売ること(車種名キャバリエ)なども決めた。

「米国にとってはトヨタの動向が焦点だった。交渉にあたっていたトヨタ役員宅が米国側に盗聴されていたと後に報じられた」。当時の担当記者は振り返る。

 その後、トヨタは怒濤のように米国に新工場を建設した。95年当時、米国内の自前の完成車工場はケンタッキー州に1カ所のみ。インディアナ州、テキサス州、ミシシッピ州に相次いで建設し、64万台だった米国での生産は、16年に138万台まで増えた。完成車に限らず、エンジンや変速機といった部品工場も新設した。


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