漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」(テレビ東京系 金曜24:52~)を取り上げ、批評する。

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「住みたい街ランキング」で、常に上位にいる街。マツコ・デラックスが「住みたい意味がわからない!」という街。そんな吉祥寺の不動産屋を舞台に、親方級の存在感を持つ重田姉妹(大島美幸&安藤なつ)が、迷える客に新たな住まい(吉祥寺以外)を紹介していくドラマ

 おすすめされる土地は、雑司ケ谷、五反田、秋葉原、十条。なんだか、どんどん吉祥寺から遠ざかってるぞ。毎回、大島と安藤が、街のおすすめスポットにゲストを連れて行く。フリートーク入れて、ドッと笑い声仕込んだら、まんま「ヒルナンデス!」の一コーナーみたいだが、大島も安藤も悟りを開いたような静かな表情で、淡々と展開。だから、まったり見ていたら、聞き捨てならない言葉が、耳に飛び込んできた。それは、「東京のブルックリン・蔵前」。思わずテレビに「なんちゅーた?」って聞き返したわ。4年ほどニューヨークでカメラマン修業をしていた女性にすすめる街。「東京のブルックリン・蔵前」(衝撃のあまり何度も言ってしまう)。

 古い倉庫をリノベして出来た新しい店が多く、アート関係の若者たちが集うから、ブルックリンに似てるよねって。古い国技館をリノベして、相撲取りとちゃんこが集う街って言われた方がまだ納得するわ。

 じゃああれか、ブルックリン橋は蔵前橋か。「ニューヨーク恋物語」で、井上陽水が歌ってた「リバーサイドホテル」のリバーは、隅田川か。窓を開けたら、ほらマンハッタンが……って、見えてるのはスカイツリーと、アサヒビールの黄金色のウンコ(みたいなオブジェ)ビルですから。

 で、蔵前の物件を紹介されたカメラマン志望の女が言うわけですよ。「家賃8万円? 安い! ニューヨーク、家賃高いんですよー」。いや、おかしいから。ニューヨークと蔵前の家賃比べるの、おかしいから。

「東京の◯◯」と称するだけで、生まれる物悲しさ。それは、ダイソーで木片買って来て、ヤスリでへり削ってレンガ風にして、壁に貼り付けたら、ほらブルックリン風のお部屋(「ヒルナンデス!」でやっていた)みたいな、やるせない貧乏臭さ。吉祥寺なら言われないのか、「東京の◯◯」。ちなみに「東京のモンマルトル」は神楽坂らしい。フランス人多くて、石畳だからって、粗削りにも程がある。

週刊朝日  2016年12月23日号

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