「今後、給料が下がる、つまり業績が下がる要因はざっと三つ。一つがチャイナリスク、二つ目が原油相場、三つ目がマイナス金利」

 鉄鋼や海運など、中国の過剰供給や景気低迷の影響を受ける業界も少なくない。今季ベアに踏み切った自動車各社にしても、昨年末の米利上げで自動車ローンの金利も上がってしまうため、米国市場が減速する可能性もある。そうなれば鉄鋼業界には泣きっ面に蜂、だ。

 毎年2月と8月に「倒産予備軍」の危ない企業300社のリストを公表する東京経済情報部の森田幸典氏も「今年2月の最新の報告会のリストには、東証1部を含む上場企業27社が名を連ねた。リストにある企業は、中国で事業展開し損失を計上している企業が目立つ。一世を風靡した太陽光発電関連ビジネスでも、買い取り価格の見直しで急速に市場が冷え込み、資金繰りの悪化やトラブルを起こす企業が増えている。アパレル、出版などの斜陽産業に属す業種も倒産予備軍に多く入ってきている」とする。

 では最後に賃金カーブを上げるベア以外の見通しはどうか。専門家の見解は、

「有効求人倍率はいいが、どこもベアには慎重。日本は一度上げると下げられず、退職金も上がることになり負担が大きい。人件費はボーナスなどで調整しようとする傾向が鮮明で、多くは一時金の上乗せで終わるかも。上方向にも下方向にも今後ボーナスの振れ幅は大きくなる」(経営コンサルタントの小宮一慶氏)

 暗い話のオンパレードだが、こんな見方もできる。岡三証券シニアストラテジストの小川佳紀氏は「為替が円高方向で、外需企業には厳しい年。円安に頼って利益を上げた会社は化けの皮がはがれ、本来の力が試される年となりそうです」。

 経済評論家の中原圭介氏によると、キャッシュリッチな光製作所、東部ネットワークや、財務体質が強い名糖産業、東洋炭素といった会社も黒字基調で賃上げ余地あり。人も会社も修羅場で真の姿を見せるもの。長く共にすれば、いずれバッチリ素顔を見る。会社員の皆さん、それはひょっとして今なのかもしれない。

週刊朝日 2016年4月1日号より抜粋