A「最近の研究で、脳の働きに関わる遺伝的要因が約6割を占めることがわかってきました。衝動性を抑制するセロトニン系の機能的低下や前頭前皮質の活動低下などのさまざまな要因です。

 以前は、環境的な要因が強調され、家族の対応や養育環境が悪いなど、家族に原因を求める傾向がありましたが、今はこうした考えは支持されていません。発症の道筋は単純ではなく、遺伝学的な基盤と環境が複雑に絡み合いながら発症します。家族を協力者として考えるほうが治療するうえで重要です」(黒田医師)

Q 本人に治療の意思がない場合はどうすればいいのですか?

A「BPDの患者は、治療への意欲に乏しい場合が少なくありません。衣食住が満ち足りると、自分でも何が困っているのかわからなくなってしまうのです。

 たとえば、必要以上のお小遣いをもらっている場合は制限するなど、周囲が下駄を履かせている部分を制限し、現実に直面することが先決です。社会に出る時期が早ければ早いほど、患者の可能性が制限されません」(黒田医師)

週刊朝日 2016年1月1-8日号より抜粋