長年取りざたされてきたピロリ菌と胃がんの因果関係が、ついに「ある」と認められたわけだ(※イメージ)
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 2014年9月、国際がん研究機関は、「胃がんの8割はピロリ菌の感染が原因」と発表。胃がんの予防としてピロリ菌(正式名称は、ヘリコバクター・ピロリ)の除菌治療を検討するように勧告した。長年取りざたされてきたピロリ菌と胃がんの因果関係が、ついに「ある」と認められたわけだ。

 四谷メディカルキューブ内科診療部長の伊藤愼芳医師は言う。

「日本は世界的に見てもピロリ菌感染率が高いだけでなく、胃がんとの関係も強い地域です。日本人の胃がんのほとんどにピロリ菌感染があり、全く感染していないのは1%程度という報告もあります」

 治療法の詳細は後述することにし、まずピロリ菌について説明しよう。

 ピロリ菌は、胃粘膜の表面や粘膜の中にすむ細菌だ。胃の中は胃酸によって強い酸性になっているので、通常の菌は生きていけない。しかしピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を出して自分の周囲だけ酸を中和し、すめる環境にしてしまう。

 感染経路ははっきりわかっていないが、口を介すと考えられている。

「長く、川の水や井戸水を飲んで感染するとされてきましたが、近年は母子感染が中心ではないかと言われています。離乳食が一般的でなかったころは、離乳期の子に親が食べ物をかみ砕いて与えていました。こうした口移しが原因である可能性は高いと思います」

 と東京医科大学病院内視鏡センター部長・教授の河合隆医師は言う。

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