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 漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「あさが来た」(NHK 月~土曜8:00~ほか)について、セリフやキャラクターに違和感を覚えるという。

*  *  *

 朝ドラ「あさが来た」がおもしろい。まずヒロインあさ(波瑠)は、「地道にコツコツ」とか口に出さず、燃える石(炭)を荷車に積んで突っ走る勢い。「イケメン朝ドラ」などと標榜(ひょうぼう)しなくても、いい男や味のあるキャラ、安定感抜群の脇役が目白押し。嫁いだ姉妹の明暗が、幕末から明治を生きる市井の人々の明暗そのものでもあり、そりゃ有働由美子アナのつけまつげも落ちるって。

 でもね、「びっくりぽん」はどうだろう。無差別にぶっこまれる「びっくりぽん」。ビッグなカンパニーを「びっくりぽんなカッパのことだす!」と、言い放つ無理矢理感。姉・はつ(宮崎あおい)が産気づく緊迫の瞬間にも「ほんま? びっくりぽんや!」って、話の腰を折ること、ぎっくり腰のごとし。そんなフレーズが流行すると思っているとは、びっくりぽんや~(言うわりに、使ってますが)。

 そして、登場人物の中で最大びっくりぽん要素を持つ男。それは、ディーン・フジオカ演じる五代才助(友厚)だ。大阪の町なかで幼女あさ(鈴木梨央)と衝突。物怖じしないあさの態度に一目おき、どうやったのか素性を調べ上げ、ロンドンからエアメール。

「この街で、二輪車(自転車)で走り回るおなごを見ていたら、なぜかあなたを思い出しました」

 ほんの2回ほど会っただけの幼女を思い出すだけでもびっくりぽんだが、その後、大阪で再会した時のあさは、鈴木梨央から波瑠に成長してたというのに、一発で特定。「やっとこさ、会えたな!」と、お前はシャルル・ドゴール空港で中山美穂に出会った辻仁成か。

 さらに、嫁ぎ先にまで上がり込んで、旦那(玉木宏)に「(あさとの出会いは)運命」と宣言したかと思えば、いきなり逆ギレ。

「大商人の奥様に納まっておしとやかに茶など出しくさって。おなごいうのはやっぱりつまらんもんやな!」

 なんなのこの近代大阪経済の父。情緒不安定すぎ。

 立ち位置的には、ヒロインをビジネス面で教え導くイケメン(少女漫画「ガラスの仮面」でいうと、「紫のバラの人」みたいな)なのに、口を開けば「ビッグなカンパニー」が「ライト!」的なルー大柴語が炸裂(さくれつ)する。あの「紫のバラの人」がルー大柴、つまり「紫のルー大柴」五代才助。朝ドラ史上、心に残るびっくりぽんキャラにちがいない。

週刊朝日  2015年11月20日号