参議院本会議で可決、成立した安保法案。法案に反対していた作家・室井佑月氏は自民党だけでなく、民主党議員にも失望する。

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 安保法が9月19日の未明、参議院本会議で可決、成立した。これで日本は自国が攻撃されていない場合でも、他国の戦争に参加することが可能になった。安倍政権により、いとも簡単に、この国の戦後70年の平和主義は変えられた。

 安保法、各メディアの世論調査だと約6割の国民が反対し、約8割が今国会での成立には「説明不足」としているのに。

 メディアは世論調査の結果を、他人事のように伝えた。8割が説明不足という結果は、メディアへの評価でもあると、あたしは思う。

 国会審議は、どうしてテレビで中継されなかったのか。「説明不足」と感じている国民にとって、推進派と反対派が喧々囂々(けんけんごうごう)やり合っている国会審議を見ることが、この法案のいちばんの理解の手立てになったのではないか。

 メディアは自分たちの意見をいいたがらず、街の人の声に頼ることが多くなった。賛成・反対を半々で載せる、もしくは流す。割合からすると、それはおかしなことだ。でももっとおかしいのは、賛成の人の意見は、個別的自衛権の強化を求める声であって、今回の憲法の解釈を歪め、集団的自衛権行使容認をどう考えるかという問題からズレていても、まったく気にしていないところ。そのまま、載せる、流す。自分らの仕事が不味いと、頭を抱えたりしない。

 とここまで書いたところでニュースで、共産党が安保法の廃止を目指して、来年夏の参議院選挙に向けて、ほかの野党との選挙協力を呼びかけている、と流れてきた。

 詳しく知りたくて、志位さんの会見を見てみた。

 
 志位さんいわく、「国民的な大義」で、「この連合政府の任務は、集団的自衛権行使容認の『閣議決定』を撤回し、戦争法を廃止し、日本の政治に立憲主義と民主主義をとりもどすことにある」そうだ。

 独自路線で頑なだった共産党が変わった。国民のことを考えてだ。安保反対が多い中、喜ばしい大ニュースだと思ったが、案の定、小さくしか取り扱わない。

 てか、採決の翌日の週末も、お約束程度にしか安保について放送しない。朝の番組にも、夜の番組にも、自民の稲田議員が出てきて、民主党議員が自民党の女性議員を怪我させたといっていた。

 それは安保についての報道じゃない。6割の国民の声に応えた山本太郎議員の行動を馬鹿にすることもそうだ。

 ここまで国民から遠く離れてしまった報道は、国民の敵なのか、ただわかっていないだけなのか。

 共産党の呼びかけにいち早くツイッターで、一緒になんてやれるか発言をした民主党議員がいる。こやつらを民主党の主流のように扱ったら、完全に敵だわ。

 民主党は反自民の受け皿としてわかりやすくなったほうがいいわけで、多くの国民はそいつらこそ、民主党から出てけって思ってる。こんな簡単なこといわせんな!

週刊朝日 2015年10月9日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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