田原総一朗「総裁選なき自民党は、陰湿で閉鎖的だ」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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田原総一朗「総裁選なき自民党は、陰湿で閉鎖的だ」

連載「ギロン堂」

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田原総一朗氏は、今回の総裁選に安倍晋三首相以外の候補も名乗りを上げるべきだという(※イメージ)

田原総一朗氏は、今回の総裁選に安倍晋三首相以外の候補も名乗りを上げるべきだという(※イメージ)

 長年自民党総裁選を見てきたジャーナリストの田原総一朗氏は、今回の総裁選に安倍晋三首相以外の候補も名乗りを上げるべきだという。

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 自民党総裁選が9月8日に告示されることになっているが、この総裁選に対する自民党の空気に、少なからぬ違和感を覚えている。

 私は、古くは池田勇人が総裁に選ばれたときから、ほとんど歴代の総裁選を取材している。三角大福中と称された、佐藤栄作以後の総裁選、ポスト中曽根を狙う安倍晋太郎、竹下登、宮沢喜一のニューリーダーの争いもあった。

 自民党の総裁選には、必ず複数の候補が名乗りを上げて競う。それがパターンになっていたのである。

 自民党とは、いわば総合デパートのような政党であった。保守もいればリベラルもいる。タカ派もいればハト派もいる。そして党内で自由に、多様な見解を展開できる。それが自民党であり、だから政治にかかわるジャーナリストたちは、社会党や共産党といった野党ではなく、自民党内の主流派、反主流派、非主流派の取材に力点を置いていた。

 現在でいえば、安保関連法案が憲法違反かどうか、あるいはどの部分が憲法に抵触するのかといった議論は、自民党内で展開される。それがあたり前だったのである。

 去年の7月、自民党は集団的自衛権の行使について、どのような事態が生じたときに、どの程度行使するのかを、公明党と時間をかけて練り上げたが、従来の自民党であれば、あの程度の論議は党内で行われていたはずである。

 しかし、自民党内で、安保関連法案についての論議が、ほとんど行われなくなり、自民党が総合デパートではなくなってしまったのである。

 そればかりか、自民党内で論議をするのがまるで悪いことのような“空気”、いわば締めつけがどんどん強まっている。安保関連法案について、安倍首相と異なる意見を言うことが、まるでとんでもない“造反”のような捉え方をされるようになっているようだ。これは自民党としては健全とはいえない。いろんな意見が自由に交わされることによって、だんだんと法案が確かなものになっていくのであり、党内民主主義が欠如すると、未完成な、欠陥を持った法案が国会に出されてしまうことになる。話がいささか脱線した。

 自民党総裁選を前に、細田派、額賀派、岸田派、二階派など全派閥が安倍首相支持を打ち出した。たとえば、岸田派は宏池会で、伝統的にハト派であって、安倍首相とは体質が異なっているはずである。宏池会の名誉会長である古賀誠氏は、岸田文雄氏に出馬を促したが、岸田氏は出馬せず、安倍首相支持を表明したようだ。また、非主流派で、何の役職にもついていない石原伸晃氏に、かつて派閥の領袖だった山崎拓氏が出馬を働きかけたのだが、派閥の議員が軒並み反対をしたということである。宏池会でも、議員たちが造反とみられるのを恐れて、岸田氏の出馬を止めたという情報がある。そんななかで、いま注目されているのが無派閥の野田聖子氏の動静である。野田氏は、現在の自民党では、自分の思いを率直に語る数少ない政治家である。その野田氏に魅力を覚えている議員は少なくない。だが、いざ野田氏を総裁候補として推薦するとなると、相当強い締めつけがあるようだ。あるいは、野田氏を出馬できなくすることが自民党のためだとする空気が強いのかもしれないが、これは逆で、野田氏も出馬できない自民党は陰湿で閉鎖的な政党だと国民の多くは受け止めるはずである。

週刊朝日 2015年9月18日号


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田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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