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 第二次世界大戦終結から70年の節目を迎える今年。歌手・俳優の美輪明宏さん(80)は、戦時中の芸能を振り返る。

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 私は、時代の目撃者だと思っています。日本は長い間まとってきた軍国主義の衣装を、1945年の8月15日を境に、民主主義へと衣替えをします。私たちはいまだ着こなせずにいる。それでも、しわの寄った襟や裾を引っ張りながら、何とか歩いてきました。立派だと思いますよ。

 ただ、悲しいかな。文化は失われかけている。戦後、建築家は、照明室や音響室から舞台が見えないといった不完全な箱モノを全国に建てました。そしていま、青山劇場などの閉館に見るように、日本中から舞台やホールが消え始めた。文化盛衰の歴史。それが戦後70年という歳月です。

 振り返れば、日本は劇場すらない時代が続いた。日活や東映の大スターや流行歌手でさえ、映画館や桟敷席の残る芝居小屋や学校の講堂で歌ったものです。

 芸能が輝きを持ったのは、大正の終わりから昭和初期にかけて。退廃美とシュールな感覚が開花したエログロナンセンスの時代です。東京では「浅草オペラ」が上演され、日本初のジャズ歌手となる二村定一さんや、喜劇王の榎本健一さんらスターが生まれた。

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