忘れられた福島・双葉町 中間貯蔵施設ルポ 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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忘れられた福島・双葉町 中間貯蔵施設ルポ

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週刊朝日#原発

 震災から4年を経ても、ゴールの見えない収束作業が続く福島第一原発の周辺。福島県大熊町、双葉町にまたがる16平方キロの地帯には、原発事故後の除染によって出た汚染土などを最長30年間保管する中間貯蔵施設がつくられようとしている。ジャーナリストの今西憲之と本誌取材班が被災地の現状をルポした。

*  *  *
 環境省は3月、大熊町と双葉町にある中間貯蔵施設の建設予定地に、除染で出た汚染土の搬入を始めた。搬入開始から1カ月、中間貯蔵施設の実態はどうなっているのか。記者は4月中旬、双葉町内で“潜入取材”を試みた。

 ほぼ全域が帰還困難区域に位置し、全町民が避難した双葉町。3月1日に全線が開通して多くの車が行き交う常磐自動車道を降りて町に入ると、人影はほとんどない。行き交うのは原発の収束作業員を乗せた車か、除染関係の車ばかりだ。

 そんな中、あわただしく車が出入りする一角があった。近づくと、身につけていた線量計の数値が1マイクロシーベルト/時を超えて3、4と急上昇する。ついには5マイクロシーベルト/時を超えた。重機がうなりをあげて整地作業を行う横で、大きなクレーン車が黒いフレコンバッグをつるして移動させていく。福島第一原発から直線距離で2キロにも満たない場所にある双葉工業団地の跡地。ここは中間貯蔵施設予定地内で、今は汚染土の保管場となっているのである。

 保管場は国が工業団地の中の約3万平方メートルを借り受けているもの。2月から整備が始まり、3月から搬入が開始された。整地された土地には、すでに双葉町や大熊町から搬入された黒いフレコンバッグがずらりと並んでいた。

 フレコンバッグには、タグでナンバーが振られ、

<土壌等 土壌、小石、砂利等 平成25年度大熊町除染工事>

 などと記され、除染作業によって出た汚染土であることがわかる。

 バッグに貼られた茶色の粘着テープには、

<948kg H27.3.28 2.56マイクロシーベルト/時>

<1120kg H27.3.28 5.47マイクロシーベルト/時>

 などと、放射線量の記載がある。中間貯蔵施設の関係者はこう説明する。

「テープには搬入した日付と重量、そして測定した放射線量を記載しています。施設への搬入時に計量してトラックからフレコンバッグを下ろし、帰るときにトラックを除染という手順で作業を進めています」

 テープを見て驚くのは、放射線量の高さだ。4.67、5.65、4.67、5.47、3.47と、軒並み高い数値ばかりが並んでいる。年間の被ばく量を国の基準である1ミリシーベルト以下に抑えようとすれば、空間線量は0.23マイクロシーベルト/時以下にしなければならない。見た限り、大半のフレコンバッグにはその10倍以上の数値が記されていた。

 場内の掲示板には、施設内の場所ごとの空間線量を示すサーベイマップがあった。フレコンバッグが数多く設置されているところは、2.97マイクロシーベルト/時や2.70マイクロシーベルト/時など、高い数値が並ぶ。東京電力が公表している福島第一原発の敷地内の空間線量が1.02~3.70マイクロシーベルト/時程度だから、原発の敷地内に匹敵する数値だ。中間貯蔵施設の作業員の一人がこう語る。

「原発も建屋周辺以外なら今は1~2マイクロシーベルト/時だから、ここはそれ以上ですよ。私もそうですが、ここの作業員は原発で作業した経験のある人が多い。原発で放射線の被ばく量が上限近くなり、移ってきた人もいます。『こんなに線量が高いのか』とびっくりしていますよ。マスクなど原発敷地内ほどの装備をしていないのに、この放射線量の高さ。正直、しり込みしそうになりますね」

 中間貯蔵施設の期間は最長30年間とされている。長期間にわたってフレコンバッグに入れられた汚染土が置かれて、土壌に影響はないのだろうか。

 心配なのは施設内だけではない。

 常磐自動車道を車で走行すると、楢葉町、富岡町などの耕作の行われていない田畑のあちこちに、こんもりと盛り上がった緑のシートに覆われた巨大な空間が見える。シートの中身は汚染土を詰めた大量のフレコンバッグ。持っていく場所のない汚染土の仮置き場だ。中にはフレコンバッグが野ざらしにされ、破損して中身がむき出しのものもある。

 環境省によれば、福島県内の仮置き場は現在約980カ所、除染を行った民家の庭先などに置いたままの「現場保管」は約8万6600カ所もある。当初、国は仮置き場の期限を3年間をめどとしていたが、中間貯蔵施設の用地取得が進まない中、なし崩し的に長期化しつつある。楢葉町で仮置き場に土地を提供する地元男性がこう語る。

「国には1千平米あたり年間20万~26万円で貸しています。今は稲作をやっても、米を売ることはできない。それならばと仮置き場を了承しましたよ。けれど、長く置いておけば土壌が汚染され、米などの作物はつくれない。一度受け入れれば、土地は死んだも同然になる。かといって、何もしないと、カネがなくなり野垂れ死にするしかない。どの道を行っても、最後は絶望するしかない」

(ジャーナリスト・今西憲之、本誌取材班=小泉耕平/横田一)

週刊朝日 2015年5月8-15日号より抜粋


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