田原総一朗「天皇陛下のパラオ訪問ににじむ戦火への危機感」
連載「ギロン堂」
9日、天皇、皇后両陛下がパラオを慰霊のために訪問された。このことを通じて、ジャーナリストの田原総一朗氏は、天皇、皇后両陛下が今の日本に危機を感じているのだと分析する。
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戦後70年の首相談話が話題になっている最中、天皇、皇后両陛下が太平洋戦争で激戦地となったパラオ共和国を訪ねた。「慰霊の旅」である。
8日に羽田空港を出発した際、陛下は安倍晋三首相たちを前にして、「祖国を守るべく戦地に赴き、帰らぬ身となった人々のことが深く偲ばれます」と表明した。そして最大の激戦地となったペリリュー島のことにも触れた。
「日本軍は約1万人、米軍は約1700人の戦死者を出しています。太平洋に浮かぶ美しい島々で、このような悲しい歴史があったことを、私どもは決して忘れてはならないと思います」
両陛下は、8日の夜は海上保安庁の巡視船で泊まり、9日の朝にヘリコプターに乗ってペリリュー島に向かった。陛下は80歳を超え、心臓病と闘ったお体での激務である。
風化しがちな戦争の歴史と向き合わねばならないという、強い思いが込められているのであろう。
ヘリコプターでペリリュー島の飛行場に到着した両陛下は、バスに乗り換えて島の南端に日本政府が1985年に設置した「西太平洋戦没者の碑」へ向かい、供花台に日本から持参した白菊の花束を供えて深く拝礼した。また、沖合に見えるやはり日米の激しい戦闘が行われたアンガウル島に向かって、再び拝礼した。

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