歴史も証明「原油安」でふくらむ戦争の可能性 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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歴史も証明「原油安」でふくらむ戦争の可能性

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 昨年秋以降、原油価格が急落している。消費者にとっては嬉しい話だが、戦争が起きる可能性を孕んでいる。その背景にはロシアの経済危機があるという。ロシア経済は原油と天然ガスだけで輸出の7割を占めており、この原油価格急落でルーブル安となってしまったのだ。

「ロシアは経済成長のために外国から借金をしてきました。ロシアの企業などは今年末までに1340億ドル(約16兆円)を返済せねばなりません。ルーブルが下がると、この対外債務、外国からの借金が増え、借金を返済できなくなる恐れがあります」(マーケットアナリストの豊島逸夫氏)

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、ロシアの対外債務は2013年で7288億6400万ドル(約85兆7千億円)もある。例えば、ルーブルが1ドル=30ルーブルから60ルーブルに下落すると、借金額は2倍になり、債務不履行(デフォルト)に陥る。

「1998年のロシア危機の再来」というよりも、むしろ「第2の欧州危機」が始まると推測するのは、経済評論家の山口正洋氏。

「98年と今は状況がまったく違います。今はロシアに対して巨額な投資をしているので、ロシアが破綻すると痛手を負うのはEUです。特に、ロシア国債の主要な買い手はドイツ、フランスなどの西欧諸国なので、万が一、ロシアが債務不履行となれば膨大な不良債権が発生することになります」

 前回のロシア危機では、アメリカのヘッジファンドが多数巻き込まれたため、アメリカが先頭に立って金融危機を阻止しようとしたが、大型のヘッジファンドはリーマンショックでほぼ消滅しているので今回は介入する気配はない。

 一方、こうした見方もある。

「アメリカが静観しているのは、ロシアへの経済制裁を強めたいからです。ロシアは中国とともにBRICSという新経済圏を築き、昨年上海に新開発銀行まで設立した。欧米が主導してきた金融体制に対抗する流れを阻止したい、という意図があるのです」(参議院議員で国際政治経済学者の浜田和幸氏)

 専門家からは、ロシアのプーチン大統領が原油価格を上げるために、戦争を起こすかもしれないとの見方まで出ている。

 昨年9月の国連演説で、アメリカのオバマ大統領は「人類が直面する3大脅威」として、「エボラ出血熱、イスラム国、ロシアの欧州侵略」を挙げた。プーチン大統領は「敵意そのものだ」と反発したことは記憶に新しい。

「プーチン大統領は国民の8割から熱烈な支持を得ています。過去の歴史から見ても、原油の大幅な下落の後には急騰している。そのきっかけは地政学リスクを起こすことです」(浜田氏)

 過去を振り返ると、1973年にイスラエルとアラブ諸国による第4次中東戦争が起こると、1バレル=3ドル程度だった原油価格が一気に約12ドルまで上がった。78年のイラン政変を引き金に、原油価格が3倍に跳ね上がる第2次石油危機が起きた。このように世界経済が混乱すれば、日本経済への影響もまぬがれない。

週刊朝日  2015年1月30日号より抜粋


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