昨年、流行した風疹だが、職場での風疹の大規模流行はいつ起きてもおかしくない状況だという。国立感染症研究感染症疫学センター第三室室長の多屋馨子医師に、風疹ワクチン接種の重要性について聞いた。

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 2012年度に実施された厚生労働省の感染症流行予測調査によると、風疹の免疫を持たない1~49歳の人は618万人(男性476万人、女性142万人)と推計されます。このうち成人は475万人です。

 風疹は子どものかかる病気と思われがちですが、実は昨年の大規模流行の中心は成人男性で、男性は女性の約3倍多く、特に男性の20~40代、女性は20代の方が多くかかりました。この背景には風疹の予防接種制度が男女別、年代別で異なっていることがあります。 過去に風疹にかかっていれば抗体がありますが、風疹については記録や記憶も曖昧な方がほとんどなのです。

 今年4月1日時点で、52歳以上の女性と、35歳以上の男性は、これまでに風疹ワクチンの定期予防接種の機会が一度もなかった方たちです。また妊娠することの多い20~40代の女性のうち、特に20代に、風疹の抗体を持たなかったり抗体価が低かったりする人が多くいるので注意が必要です。

 感染原因・経路がわかる男性患者約1800人のうち、7割が職場で感染しています。職場や通勤途中には妊娠初期でまだ妊娠に気づいていない女性がいるかもしれません。特に30~40代の男性を多く雇用している職場や、海外で風疹が流行している地域に出張することが多い職場では流行のリスクが高いです。

 公共施設など多くの人の利用する場所やサービス業の方なども感染の機会が多くなります。周囲の妊婦さんと生まれてくる赤ちゃんを風疹から守りましょう。自分が原因で感染させてしまったら、お互いにつらいものです。

 職場の責任者の方は、もし従業員が風疹になったら、完全に治るまでは出社しないことを徹底させてください。感染が広がり長期にわたれば企業の損失も拡大します。

 ワクチン接種は抗体検査の結果を調べてから行う方法もありますが、調べずにワクチンを接種しても医学的に問題はありません。

 現在、はしかも流行の兆しがあるので、はしかと風疹混合のMRワクチンを接種することをお勧めします。

週刊朝日  2014年6月6日号