藤巻健史「経常黒字最少で、円はどう考えても弱くなる」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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藤巻健史「経常黒字最少で、円はどう考えても弱くなる」

連載「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」

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 昨年度の我が国の経常黒字激減を受け、モルガン銀行東京支店長などを務めてきた藤巻健史氏は、日本も「双子の赤字国」になる日は近いと危惧する。

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「損したら自己責任、儲かったらフジマキの貢献」は私がいつも使う常套句だ。相場の予想を間違えると非難が殺到するが、当たっても、お歳暮もお中元も読者の皆さまから一度もいただいたことはない。週刊朝日の原稿料ぽっち(朝日新聞出版さん、失礼)でサンドバッグ状態になるのはまっぴらだ。「損したら自己責任、儲かったらフジマキの貢献」を今回もお忘れなく。

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 5月12日に発表された昨年度(2013年4月~14年3月)の経常黒字は、たったの7899億円だった。比較できる1985年度以降で最少だ。今年度の経常収支は、ゆるやかに改善すると予想するムキが多いが、海外経済の状況によっては赤字に転落してもおかしくない。

 このような状況下においては、中長期的にドル高・円安を予想せざるを得ない。少し前、私がドル高・円安を予想したとき、最初に出てくる反論は「でも米国は、財政赤字と経常赤字の双子の赤字だぞ」だった。「双子の赤字の国の通貨なぞ強いはずがない。買えるわけはない」という発想だ。

 しかし、経常収支が赤字に転落したら日本こそが双子の赤字国となる。しかも、財政のほうは世界に冠たる赤字幅だ。

 一方、米国はシェールガス革命のおかげで双子の黒字になりかねない勢いだ。今までのように原油を大量輸入しなくてもすむかもしれないからだ。直近でも経常収支は大幅に改善している。さらには財政赤字も、だ。

 昨年、美術館などの公的施設が資金繰り悪化で一時的に閉鎖された。それが強烈な印象として残っておられるのだろうか? 「米国の財政状況は、いまでも救いがたい」と思っている方が多いようだ。とんでもない。米国の国内総生産(GDP)に対する財政赤字の比率を見てほしい。

09年 10.1%
10年 9.0%
11年 8.7%
12年 7.0%
13年 4.1%
14年(予想) 3.7%

 急速な改善を示している。リーマンショックからの経済回復力といい、米国の修正力にはいつもながら感心する。これが米国の実力だ。

 オバマ大統領が3月4日に提出した15会計年度(14年10月~15年9月)の予算教書によると、15年度の財政赤字は対GDP比で3.1%だ。さらに改善は続くことになる。私が円に弱気になり、ドルに強気になる理由がおわかりだろうか?

 ところで余談だが、米国の15会計年度の3.1%は、実はこれでも、米国がユーロを導入したくても(そんなことはあり得ないが)、拒絶される水準だ。92年のマーストリヒト条約でのユーロに参加できる基準は、財政赤字を対GDP比3%以内に抑えなければならない。3.1%ではギリギリ、アウトなのだ。

 それでは日本はどうか?と恐る恐るチェックしてみよう。私の計算だと11.3%。3%の合格基準からして、とんでもない落第生だ。ユーロへの参加希望の応募書類を出せば「顔を洗って、おととい出直してこい」と、けんもほろろに追い返されるのがオチだろう。

 ちなみに、累積赤字の対GDP比での合格基準は60%以内、日本は213%である。円はどう考えても弱い。安全通貨では全くない。

週刊朝日  2014年5月30日号


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藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。2013年7月の参院選で初当選。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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