超進学校「開成」「灘」校長に聞く「学歴社会は崩壊したか?」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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超進学校「開成」「灘」校長に聞く「学歴社会は崩壊したか?」

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灘高等学校校長和田孫博(わだ・まごひろ)1952年生まれ。灘中・高校、京大文学部卒業。母校に英語化教諭として就職。野球部の部長・監督も務める。2007年、校長に就任。長男も灘中・高校に通った(撮影/写真部・工藤隆太郎)

灘高等学校校長
和田孫博(わだ・まごひろ)

1952年生まれ。灘中・高校、京大文学部卒業。母校に英語化教諭として就職。野球部の部長・監督も務める。2007年、校長に就任。長男も灘中・高校に通った(撮影/写真部・工藤隆太郎)

開成高校校長柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)1947年生まれ。開成中・高校、東大工学部卒業。民間企業に勤務後、東大大学院修了。ハーバード大大学院准教授・併任教授、東大名誉教授(工学博士)。2011年、校長に就任(撮影/写真部・工藤隆太郎)

開成高校校長
柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)

1947年生まれ。開成中・高校、東大工学部卒業。民間企業に勤務後、東大大学院修了。ハーバード大大学院准教授・併任教授、東大名誉教授(工学博士)。2011年、校長に就任(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 日本で一、二を争う進学校「開成」「灘」の校長が対談を行った。開成の柳沢幸雄校長と灘の和田孫博校長が語った安倍内閣が推し進める教育改革の問題点とは?

*  *  *
――安倍内閣の教育改革が進んでいます。

和田:今の教育改革は、理念だけ先行して、制度のいじくりになってきているのが気になります。大学入試改革も、そもそもセンター試験がダメな理由の検証もないまま、結論と期限ありきで進んでいます。

柳沢:私はよく「社会的連鎖」という言葉を考えます。子育てのゴールは何かというと、大人になって自分で食べていけることです。そのためにどの大学へ行くか、そのためにどの高校へ行くか、と。その連鎖の途中だけを考えても決してうまくいきません。博士課程の学生が増えても、仕事がないのがよい例です。社会がどんな人材を求めているかを見通して制度をつくらなければならないのです。

――グローバル教育も積極的に進めようという機運があります。

柳沢:うーん。海外で自由闊達(かったつ)に学んだ学生を、日本の企業は受け入れられる土壌があるでしょうか。

和田:生意気だと言われてしまうかもしれませんね。

柳沢:奨学金があれば、生徒は海外にどんどん行くでしょう。でも、帰国してミスマッチだったら、それは莫大な国費の損失です。開成からも直接、海外の大学に進学する生徒が増えてきましたが、私は現地で就職活動をしなさい、と言っています。

和田:灘から初めて米ハーバード大へ進学し、同大学院も修了した非常に優秀な生徒は、楽天に就職しました。執行役員ですし、十分なキャリアではあります。ですが、彼を受け入れる素地のある企業は日本全体では非常に少ないのではないでしょうか。大学入試の英語をTOEFLにしましょう、という意見も出ています。これには驚きました。今の指導要領では、高3までに学ぶ英単語は3千語。TOEFLは1万5千語です。さらに、1回の受験で数時間かかるTOEFLを本当に入試の英語に置き換えるつもりがあるのかどうか。実情を知らない人の思いつきの発言が独り歩きしていて危険です。

――教育改革は次に私立にも及ぶのではないかと言われています。人材育成や国際化などの取り組みに応じて、予算配分を国が決めることが想定されます。

柳沢:米国の各大学の教授に、学校の特徴を尋ねると、誰もが「ダイバーシティー」と言います。多様性です。多様性のある組織は外界の変化に、どこかの部分がうまく適用できますから生き残ることができる。特に教育は多様性を維持しておかないと、いろいろな世界情勢の変化についていけなくなります。人材の育成が国にとっていちばん重要ですから、それを国が一方的に決めてしまうようなことは、国家にとって自殺行為だと思いますね。私立があって公立があって。それぞれに建学の精神があって、独自の教育を展開しているのが正しい姿だと思います。例えば、教科書が固定教科書1種類だったら、うまくいきませんよね。それと一緒です。

和田:少子化で生徒数は減少し、これから私学は大変苦しい時期を迎えます。だからこそ、私立が独自にできることをやらせてもらいたい。我々に委ねてほしいと思います。それが子どもたちに、多くの選択の余地を与えることにつながります。

――「学歴社会」は崩壊しましたか?

柳沢:学歴がいちばん輝くのは3月10日の東大の合格発表です。いまの社会で30歳になって学歴で勝負できる人はいないでしょう。

和田:一昔前は、企業も学歴重視でしたが、今はさまざまな観点から選抜するようになりました。東大に入れたから偉いという認識はもうありませんね。ですが、自分自身が高等教育で身に着けた能力は、学歴として誇りにしていいと思います。

週刊朝日  2014年5月9・16日号より抜粋


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