室井佑月「あの言葉は猪瀬前都知事の“最後っ屁”」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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室井佑月「あの言葉は猪瀬前都知事の“最後っ屁”」

連載「しがみつく女」

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 医療法人「徳洲会」から5千万円を受け取り東京都知事を辞任した猪瀬直樹氏。作家の室井佑月氏は、今年最初の本誌連載「しがみつく女」で、同氏の“イタチの最後っ屁”について語った。

*  *  *
 あけましておめでとうございます。2014年はどんな年になるでしょうか。

 新年発売号なので明るいことを書かなきゃと考えていたけど、そういうことを考える人はほかにもいっぱいいると思うので、あたしはやっぱ好きに書くね。締め切りが近づいて来ちゃったし。テヘッ。

 14年は特定秘密保護法につづいて共謀罪まで導入されるかもしれない。我々が払う健康保険料は値上がりし、社会保障費は削られていく。消費税も上がるしな。

 TPPに加入し、どうなるかわからない。福島第一原発の本当の収束は見えず、今後、除染や最終処分場の整備などにいくらかかるか見当もつかない。

 じわじわと真綿で首を絞められるように、息がしづらい世の中になっていくような……。このじわじわ感があたしはイヤ。しかし、急に息ができなくなったら死んでしまうしな。

 じゃ、なにが最重要事項なのか。あたしは気づきこそ大事なんだと思う。

 たとえばですね。底にヒビの入った瓶に、酒を入れている(正月気分で、たとえを酒にしてみました)。

 ヒビはちょっとずつ大きくなるものだし、減ったぶんの酒は毎日足しておくから、すぐには気づかない。あれ? 昨日、こんなに飲んだっけ? みたいな日々がつづく。

 しかし、月の酒代は、尋常じゃなく上がってゆく。その時点でヒビに気づくべきである。瓶が壊れる日は、いずれ絶対にやって来る。そうなりゃ、中に入っている酒はすべてパーだ。

 なにがいいたいかというと、ここで大事なのは早くヒビに気づくということ。毎日、酒を飲むことになってしまいがちだけど。

 これを国家に置き換えると、国民に気づきを与えるのは、ニュースを流すメディアの仕事。瓶という枠組みを作ってる人の功績を重んじるばかり、新しい瓶に替えりゃいいんじゃないの? という普通の発想ができない。それどころか、ヒビを隠すのを手伝ったりする。ヤバいね。

 あれ? なにがいいたかったんだっけ。そうよ、あたしがいいたかったのは、徳洲会5千万円提供問題で東京都知事を辞めた猪瀬さんのことだったりして。

 なんで猪瀬さんが辞めたら、メディアは新都知事の話題一色になるの?

 普通に考えたら、徳洲会は恒常的にそういうことしてたって思えないか? そこをどうして追及しない? 猪瀬さんという生け贅(いけにえ)を差し出し国民を納得させようとしたって、無理じゃね?

 猪瀬さんが会見でいった言葉が印象的だった。彼は、ご自身のことを「(政治家としては)アマチュアだった」と何度もいった。

 アマチュアだったから賄賂になるとは思わず金を受け取ったのか? アマチュアだったからバレて問題になったのか?

 あたしは後者の意味に感じた。プロだったら、この程度では問題にならないのだと。あの言葉は猪瀬さんの最後屁と受け取った。

週刊朝日 2014年1月17日号


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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中。

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