ケガしても3Dプリンターで体のパーツを補える時代に? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ケガしても3Dプリンターで体のパーツを補える時代に?

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家庭用の3Dプリンター。いずれは自宅でまるごと作れる日もやってくる? (c)朝日新聞社 

家庭用の3Dプリンター。いずれは自宅でまるごと作れる日もやってくる? (c)朝日新聞社 

 製造業だけでなく幅広い分野への普及が期待され、注目されている3Dプリンター。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)准教授の小林茂氏(43)に、3Dプリンターの未来について語ってもらった。

*  *  *
 従来の「ものづくり」の考え方を、根底から変えてしまう可能性を秘めたのが3Dプリンターです。

 20世紀後半からのものづくりは、「大量に速く安く作る」という原理で成り立っていました。金型を作り、樹脂を流し込んで、ガシャン。一つの製品を作るのに1秒とかかりません。

 3Dプリンターは、入力したデータに従って、樹脂や金属などの素材を積み重ねて立体物を作り出します。複雑なデザインでも形にできますが、一つの製品を作るのに時間やコストがかかってしまいます。

 つまり3Dプリンターは大量生産には向きません。しかし、多くの種類のものを少量作るという点で威力を発揮します。すでに、精巧なフィギュアやアクセサリー、航空機の部品などが世に出ています。

 特に活躍が期待されるのは医療や福祉の分野です。実際の骨と同じ成分で作る「人工骨」は日本でも研究が進み、おそらく2030年には医療現場で積極的に使われているでしょう。また、細胞で血管や臓器を作る試みも進められています。

 仮に、交通事故で顔の一部を損傷したとしましょう。その人の顔をピッとスキャンすれば、3Dプリンターで損傷部分を埋めるパーツが作れる。事故で指をなくした人が、それを補う器具を手軽に作れる。そういったことを、もしメガネを作るような感覚でできたなら、ものづくりのあり方とともに、病気や障害に対する考え方も変わっていくのではないでしょうか。

 一方、3Dプリンターで銃やキャラクターのコピー製品などが作られてしまうというネガティブな面も報じられています。ですが、それはどの工作機械でも起こりうること。法規制なども含め、問題の本質は別にあると思います。

 ところで3Dプリンターは、ここ最近、急速に身近になってきました。データを渡せば3Dプリンターで製品化してくれる業者が次々と登場し、家電量販店では十数万円の機種も売られています。

 ただ現在は、それをもって、誰もが何でも作れる「魔法の箱」が手に入った、と思うのはやや拙速かもしれません。3Dプリンターを使いこなすには、3Dデータの知識や、製作のノウハウが必要となります。

 ただし、もっと長いスパンで考えると、3Dプリンターがある未来には希望があります。実際に使っていくと、身の回りにあるものがどうやって作られているかが見えてくる。頭の中にしか置けなかったアイデアを形にできる。

 この変化はいずれ、イノベーションや大きなビジネスにつながるはずです。よりよいものづくりを追求してきた日本人が、その創造力を存分に発揮できる時代がやってくるのです。

週刊朝日  2013年8月30日号


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