上村会長(中央)は柔道界で「院政」をもくろんでいるのか? (c)朝日新聞社 @@写禁
上村会長(中央)は柔道界で「院政」をもくろんでいるのか? (c)朝日新聞社 @@写禁

 上村春樹氏(62)が会長に居座っている全日本柔道連盟(全柔連)の混迷は、ますます深まるばかりだ。6月25日の評議員会で解任を求める動きがあったが、結論は先延ばしにされた。女子選手からの暴力・暴言告発に始まり、指導実態のない理事らの助成金不正受給や、理事のわいせつ行為などなど、不祥事のオンパレード。なぜここまで会長の椅子に固執するのか。

「上村氏は一昨年、『やりきる』というタイトルの本を出しているんです。それが彼のポリシーだってことですかねぇ……」。スポーツ紙デスクが、こう言った。本の表紙の名前の脇には、誇らしげに「講道館長」「全日本柔道連盟会長」と書かれている。これが彼の権力の大きさを表しているというのだ。

 1882(明治15)年に嘉納治五郎師範によって創設された講道館。「世界柔道を統括する総本山」で、公益財団法人でありながら歴代の館長(代表理事)は嘉納家が代々務めてきた。5代目にして初めて、嘉納家出身ではない上村氏が館長となった。全柔連会長も、嘉納家以外では上村氏が初めてだ。

「それは日本の柔道界にとってエポックだったようです。『上村さんは嘉納家へ婿入りしたようなものだから……』と、いまでも言う人がいるくらいですからね。講道館の館長と全柔連会長を兼ねるのは、すごいことなんですよ」(同前)

 柔道界では少し前、こんなうわさも流れていた。「上村は会長を辞めるらしい。後任は講道館名誉館長の嘉納行光氏のようだが、すぐ上村が復帰する」。こんな院政まがいの話がまことしやかに語られるほど、上村氏は嘉納家に食い込み、全面的な後ろ盾を得ているというのが、柔道界の共通認識なのだ。

 いかにも日本的で旧態依然とした柔道界。そのトップに立つ上村氏は「改革のめどが立ったら辞める」と言ってはいるが、真の改革は辞任の先にしか望めないのかもしれない。

週刊朝日 2013年7月12日号