プロゴルファーにとって大舞台である全米オープン。2004年にメジャー最高4位となった丸山茂樹氏は、そのハイレベルな争いの裏側を次のように明かす。

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 6月13日に男子ゴルフの今季海外メジャー第2戦「全米オープン選手権」が開幕します。舞台はペンシルベニア州のメリオンGC。テレビ朝日系列で解説を担当させていただきます!

 僕自身も5回出場しましたけど、なんといっても全米オープンの魅力は、難易度でしょう。あれは世界一ですね。USGA(米国ゴルフ協会)の手でとことん難しく設定されたコースが、選手を苦しめるんです。

 実は2000年にアメリカのツアーに本格参戦した当初は、全米オープンに対する思い入れはなかったんです。でも結構なメジャーどころが、1日2ラウンドと過酷な予選会に参加する。「何がそんなに彼らの気持ちを駆り立てるんだろう」と思って、参戦しました。そしたら前半のラウンドがなんと58! 予選だからコース設定がそこまでシビアじゃないってのはありますけど、すべての噛み合わせがよかった。結局2位で本戦に臨みました。

 絶好調のつもりで本戦に来ると、コース設定の厳しさが尋常じゃない。まったく歯が立たず、予選落ち。次に出た02年に、やっとそこそこのゴルフができて、16位。そして4度目の04年に、僕のメジャー最高の4位に入るんです。

 舞台はニューヨーク州のシネコックヒルズGC。通常の全米オープンは林間コースで距離が長く、ラフも深いのですが、ここは海沿いのリンクスコース。練習ラウンドを回りながら、「ここなら飛距離で劣る日本人にもチャンスがある」と。

 もともと調子がよかった上に、気持ちも軽くなったのがよかったんでしょう。初日、2日目とタイガー・ウッズと同組だったんですけど、コテンパンにやっつけてやりました。

 トップで迎えた3日目。フィル・ミケルソンと回ることになり、彼のギャラリーと一体になるゴルフにしてやられた。パー3ですごいホールがありましたよ。僕の前組までのベストスコアがボギー。ほとんどはダブルかトリプルボギーです。僕はワンオンですごい歓声をもらったんですけど、パターで打ったら、そのままカップを通り過ぎてグリーンも出ちゃいました。コンクリートみたいに硬くて、速い。結局ダボ……。

 パーオン率では米ツアーで初めて1位になったんですけど、順位は4位。日本だったらパーオン率1位だと、平気で優勝しちゃいますよ。でも全米オープンはダメ。ドライバー、アイアンショット、アプローチ、パターの一つでも水準が落ちると、優勝には手が届かない。めちゃくちゃ高いところでの総合力の勝負。それが全米オープン、世界のメジャー中のメジャーですよ。

 海外メジャーって、勝つべき人が勝つんです。ごくごくまれにマグレで勝っちゃう人もいるけど、そういう人は芸人さんと同じで「一発屋」ですよね。いつかいなくなっちゃってます。

 今回は早くもプロ2勝目を挙げた松山英樹が参戦します。彼があの雰囲気の中へ飛びこんでいったら、「ウォー」と思うでしょうね。僕も若いときはワクワクしましたもん。どんな結果に終わろうと、間違いなく最高の経験ができますよ。

 解説では「こういうところが日本とは違う」「だからこそ難しい、だからこそ世界なんだ」というところを提示できれば。日本のみなさんが、朝から興奮するような解説がしたいです。

週刊朝日 2013年6月21日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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