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女性役員がいると“勝ち組”企業になれる?

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週刊朝日#仕事

 雇用における男女の均等が広まるなか、いまだに役員への女性雇用は少ない日本。女性の役員登用がどう影響するのか、経営ジャーナリストの渡邉正裕氏が分析した。

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 安倍首相は今年4月、「成長戦略の柱」として女性の活用を掲げ、経済3団体に「全上場企業で、役員のうち1人は女性に」と要請した。その根拠として内閣府男女共同参画局のウェブサイトでも紹介されているのが、「組織の上位役職への女性の参画が高い組織はパフォーマンスが高い」という海外の調査結果である。これは「カタリスト」という、女性の活躍を促進するためのNPOが調査したものだ。「フォーチュン500」(米・フォーチュン誌が年1回編集・発行する企業リスト)を対象に、女性が役員に登用されている比率が高い上位4分の1と、下位4分の1を比べた結果、前者のほうが、売上高利益率が42%上回るなど、各種業績指標が優れていた、という結果だった。

 ただ、この調査は明確な目的(女性登用)を持つNPOが行っているため、中立とは言い難い。そこで、日本の東証1部上場企業を母数にして同様の調査を行おうと考えたが、そもそも女性役員が1人以上いる企業が、驚くべきことに71社しかないことが判明した(全体の4%)。そのため、上位4分の1に全く達しておらず断念。この71社と、残り(役員が男性だけ)1535社との間で、どのような差がみられるのか、を検証した。

 まず、カタリスト調査と同様、売上高経常利益率で比べると(2012年)、女性役員がいる会社が9.1%であるのに対し、いない会社は、景気が良かった07年でも、いる会社9.0%に対して、いない会社6.9%だった。

 カタリスト調査(42%)どころではなく、東証1部では12年、利益率が78%も上回っていたのだ。9%台の利益率を保った点で、女性役員がいる会社は不況にも強かった。

 それでは、この5年間での売り上げ、経常利益、時価総額などの変化率ではどうか。なお、「女性役員がいる」といっても、2人以上いる会社は8社だけで、残り63社は1人だけ。最多は4人のニチイ学館、続いて3人のツクイで、いずれも介護関連だった。

 女性役員がいる会社は突出して業績がよく、オーナー企業よりも、さらに上だった。売上高は15%伸び(全体平均は▲7%)、経常利益は17%伸びた(同▲30%)。平均給与も、「女性役員なし」が3%減らしたのに対し、2%増やしていたのである。

 それでは具体的に、どの企業が業績を伸ばしたのか。南場智子氏が創業したディー・エヌ・エーがダントツの伸びを見せた。主力事業の「モバゲー」がブレークするまで約10年の迷走があった会社だ。

「以前は、日銭稼ぎで『フレッツ光』の代理店までやっていたこともある。人脈を駆使して、いかに食い扶持を探すか、が南場さんの役割でした。そして、現社長の守安(功)さんが上り調子をつくっていった」(元社員)

 南場氏は女性創業者として、急成長企業のカルチャーや人材などの「土台」を粘り強くつくり上げた点で、他の女性役員がいる企業とは圧倒的に異質で、他に類する存在が全く見当たらない。その他は、通常の社内登用組と、オーナー一族(男性社長の親族など)組がほとんどだ。

 全体の傾向として、71社中、66%を占める47社がオーナー企業である点に大きな特徴があった。これは、血縁による登用のほか、オーナー社長の一存により実力主義で性別に関係なく登用しやすいことが背景にあるとみられる。

 業種の特徴としては、ゲーム・エンターテイメント・介護系が上位に目立つ。給与については、ニチイ学館(平均所得294万円)をはじめ、介護など給与水準が低い業種に女性役員が多く、逆に商社やマスコミといった賃金の高い業種には女性役員がほぼゼロであることから、全体の平均でも、女性役員がいる会社(71社平均)は、いない会社に比べ、社員の平均給与が87万円も低い550万円(12年)であった。

 一方、外国人役員がいる企業は、52社だけだった。今回の調査結果からは、外国人役員については、「いようがいまいが、ほぼ関係ナシ」という結果で、ほとんど差はなかった。

 売り上げはまったく同じ93%(つまり5年で7%減)である。経常利益が90%と高め(といっても5年で1割減らしているわけだが)なのは、ソフトバンクに外国人役員がいるためで、わずか52社しかない中の1社なので影響が大きく出たにすぎない。

週刊朝日 2013年6月14日号


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