2008年、水筒に入れたスポーツ飲料を飲んだところ6人が苦みを感じ、頭痛、めまい、吐き気などの症状を訴えて病院に運び込まれるという事故が東京都内で起こった。水筒に残っていたスポーツ飲料を調べると、880ppm(ppmは100万分の1)という高濃度の銅が検出された。エコブームで誰もが「マイ水筒」を持ついま、「思わぬ事態」を未然に防ぐためにも正しい使い方をしたい。
たとえば象印マホービンでは、容器の内側にフッ素加工をしている。お茶でもコーヒーでも、頻繁に使えば汚れや匂いがつきやすくなる。それを防ぐための対策です。一昨年から発売しているスポーツ飲料タイプは、フッ素加工が二重になっています」(広報部の西野尚至さん)。容器の内側に穴が開きにくい配慮がされている。
一方、タイガー魔法瓶の商品には、内側に「スーパークリーン加工」なるものが施されている。「電解研磨という手法で、水筒の内側の平滑性を向上して汚れや匂いをつきにくくするとともに、耐食性も向上させました」(ソリューショングループSPチームの伴小誉美さん)。
だがこうした技術も、使い方を間違えれば台無しになる。酸性だけではなく、塩分が濃い飲み物を頻繁に入れ、ろくに洗いもしなければ、劣化へとまっしぐら。「塩分でピンホールといわれる小さな穴が開き、保冷に関わる真空層がだめになるのです」(西野さん)。見た目にはへこみも傷もないのに保冷・保温効果がなくなった。そんな消費者の悩みを聞くと、「みそ汁やスポーツ飲料をよく入れていた」そうだ。
もしスポーツ飲料だけを入れたいなら、「スポーツ飲料タイプ」を選ぶのが無難だろう。女性は夏に「冷え対策」で温かい物を飲むことが多いが、水筒に乳製品を入れることは避けたい。「カフェオレなどを長時間入れていると腐敗しやすい。腐敗するとガスが発生し、それが内部に充満すれば、ふたを開けようとしたときに中栓が飛ぶ、つまり中身が飛び散ることも」(同)。
※週刊朝日 2013年6月14日号